『エビと日本人 Ⅱ』を読んで
普段私たちは何気なくエビを口にするが、このエビが生まれてから我々の口に入るまでどのような経緯を経てたどり着いたのかを意識することは、ほとんどない。しかしこの過程を紐解いていくと、複雑かつ深刻な、今日の地球社会が抱える問題を垣間見ることができる。
まず、エビの生産地が抱える問題である。今日のエビの漁獲量は、半数強が海で採れたもの、そして残りが、養殖によるものである。トロール船による一網打尽のエビ漁業は、エビを含む多様な海洋資源の枯渇を招いた。そしてエビ養殖業は、ここ20年で驚異的な躍進を遂げ、台湾、東南アジア各国、さらには中南米まで広がり、各地の自然を大きく変化させた。エビの養殖池の過剰建設による豊穣なマングローブ林の大伐採が、ヒトを含めた生態系を大きく狂わせた。その一例が、スマトラ沖地震において、マングローブ林の喪失により被害が拡大した事例である。また、利益を大きくするための高密度の養殖によって、エビの大量病死がしばしば起こったり、水田地帯を養殖池にすることによって、周囲へ排水汚染を引き起こすなどの被害も観測されている。
こうしたエビの飼育・漁獲...