「カントとフランス革命」
1789年のフランス革命は「自由・博愛・平等」を原則とし、人間の理性をいわば絶対視することで、民主主義・市民社会を基礎とする近代市民主義の基礎を作り上げたという点にその画期性がある。この革命は、同時代の芸術家、知識人をはじめとして、哲学者にも大きな影響を与えたことで知られている。
以下では、ドイツ観念論の祖ともいわれるイマヌエル・カントの思想と、フランス革命との関係について考察していきたい。
1、「批判期」のカント
フランス革命を境にして、カントの哲学の営みは、それ以前を「批判期」、それ以降を「後批判期」と分けることが出来る。ここでは、フランス革命以後のカントを捉える前提として、まずそれ以前のカントの思想的特徴についてみていきたい。
批判期の代表的著作は、『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の「三批判書」であるといわれるが、三冊目の『判断力批判』は1790年に書かれたこともあり、革命以後のカント哲学の端緒が表れているともいえる。
「批判期」に展開されたカントの批判哲学の概略は以下のとおりである。
従来の中世的世界観においては、創造主たる...