1942年の数学教授要目と数学教育の特徴

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    資料紹介

     日中戦争、太平洋戦争の切迫とともに教育もすべてが皇国の道の修練のためと教授要目が改正されたが、この機に以前から切望された科学振興の対策として、新しく解析幾何、微積分、画法幾何、統計、力学など近代科学技術にとって重要な事項が取り入れられた。
     数学では数・量・空間を対象としており、これらの素材は日常生活の中に現われる現象の中から見出すことができるが、これらを精密に観察して数・量・空間に関する理法を会得し、これを自由に活用する能力をもつことが大切である。理法推究の道具としては論理的な推理と形式的演算の2つがあるが、以前はこれらを偏重する教育であったが、この要目ではこの2つをあくまでも理法を会得するための手段として数・量・空間に帰着し、直観や体験を通して認識させることを基礎とした。また、数量に関する現象と空間に関する現象はもともと一体であるが、それぞれの独特の現象があるのでそれらの特徴を生かすように留意することが重要と考えて数量関係の第1類と空間関係の第2類に分割した。
     理法の一つとして事象間の一定の関係を見出す関係観念の養成が大切であるが、以前の対応、関数、定数、変数等の関係だけに限らず、合同、相似、平行、回転など図形の形状や位置などから見た関係、さらに相関関係や運動も含めた広い意味に捉えた。特に関数観念は以前非常に狭い意味に解釈され、解析的な式に表わされた関数関係のみを考え、図形変化や量の変動など様々なところに現われる関数関係を取り上げなかった傾向にあったのでその意義は大きいものであった。
     空間の見方には幾何学的空間と運動学的空間としての見方がある。これまではギリシャ数学の伝統に従って幾何学的空間のみを取り上げていたが、近代化の流れに応じて、この要目では図形を1個の孤立したものと見ずに変化の過程の1つの現われとして目前の図形を見ていこうという立場をとった。

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     日中戦争、太平洋戦争の切迫とともに教育もすべてが皇国の道の修練のためと教授要目が改正されたが、この機に以前から切望された科学振興の対策として、新しく解析幾何、微積分、画法幾何、統計、力学など近代科学技術にとって重要な事項が取り入れられた。
     数学では数・量・空間を対象としており、これらの素材は日常生活の中に現われる現象の中から見出すことができるが、これらを精密に観察して数・量・空間に関する理法を会得し、これを自由に活用する能力をもつことが大切である。理法推究の道具としては論理的な推理と形式的演算の2つがあるが、以前はこれらを偏重する教育であったが、この要目ではこの2つをあくまでも理法を会得するための手段として数・量・空間に帰着し、直観や体験を通して認識させることを基礎とした。また、数量に関する現象と空間に関する現象はもともと一体であるが、それぞれの独特の現象があるのでそれらの特徴を生かすように留意することが重要と考えて数量関係の第1類と空間関係の第2類に分割した。
     理法の一つとして事象間の一定の関係を見出す関係観念の養成が大切であるが、以前の対応、関数、定数、変数等の関係だけに限ら...

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