社会福祉方法原論① 

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    資料の原本内容

     「社会福祉制度の新しい仕組みへの移行が、利用者・家族の暮らし、福祉施設・事業所の運営・経営に与えている影響について明らかにした上で、福祉専門職に求められる課題とは何かについて論述せよ。」
     ⇒社会福祉基礎構造改革は、社会福祉の基調を施設福祉中心から在宅福祉中心に転換することを打ち出したが、地域での生活を支援するとなれば、生活の主体である福祉サービス利用者が主体となることが求められ、今までの「措置制度」では行政が主導的立場で、利用者もサービス提供者も福祉サービスの選択や決定に当事者として制度的に保障されず、利用者主体の福祉サービスにするには、サービス提供の方法を行政主導型の措置制度から利用者・事業所主体型の利用契約制度に転嫁し、こうした観点から、高齢者福祉には介護保険制度が導入され、利用者主体の制度を社会福祉の基本原則とした2000年の社会福祉法成立に代表される社会福祉基礎構造改革であった。
     この改革では障害者福祉分野での支援費制度の導入のほかに、福祉サービス第三者評価の導入、福祉サービスの質の向上、地域社会福祉協議会に「成年後見」を意図した権利擁護や、地域福祉計画策定などの地域福祉推進など利用者が地域で自分らしい生活を営むことを支援する社会福祉の在り方を打ち出した。2006年からは、改正介護保険法や障害者自立支援法が本格的に実施されている。
    一方で、増大する利用者ニーズに対するサービス提供システムの拡大は不十分であり、多様な主体参入を進展させ、市場原理・競争原理を過熱させ、福祉施設や事業所は経営の生き残りをかけ、効率的で効果的な経営管理となった。また、競争原理、規制緩和が実質的には機能せず、サービス内容においてもサービスの質の低下、人材の資料的劣化が県初となり、多様な主体の参入が図られたが、利益追求型企業による弊害も一部には現出している。例えば、契約制度になじまず利益を生まない生活問題を抱えている人々の支援を排除し、人員不足により、手のかかる利用者は利用を断られるなどの問題が生じている。また、市場原理の導入を背景として、サービス期間・施設によっては、利益追求に向かった結果、労働環境の悪化(非常勤化や低賃金化など)から多くの福祉人材が離散し、企業の利益追求と社会福祉の理念は相反する方向を求め、社会福祉労働そのものを変質させた。
    現在の福祉の現場は、雇用の流動性が起こっている。常勤と非常勤という雇用である。これらは、雇用形態の違いであり、能力の違いではないが、非常勤である事で、質を低くみられる傾向もあり改善が必要である。また、理想と現実が折り合わず、やりがいを失くす職員や、人員の偏りによる中堅層の業務の負担も大きくなっている。あるいは、ケアの個別化に伴うユニットケアの導入や個室化といった施設設備の変化や、利用者に対する個々の対応のばらつきを経過詩、個別支援の継続性、チームワークでの支援が重要視されているため、情報の共有化に伴うカンファレンス、職員一人ひとりの力量に合わせた業務や指導に時間が費やされ、職員の労働をより過酷なものにし、職員の極度の緊張・ストレスの要因にもなっている。また、社会福祉援助は利用者と職員との私的関係ではなく公共性、社会性をもって展開し、信頼性に応えるべき内容を職業倫理として要請されている。
    福祉施設・事業所に至っては、社会福祉事業を取り巻く状況が大きく変化する中、社会福祉事業の主たる担い手である、社会福祉法人についても、改めてその在り方が問われている。措置制度から契約制度に移行し、国が社会福祉における責任を放棄したため、国からの補助が削減され、利用者の払う利用料と自己資金で運営するため、低所得者への配慮、公益的取組の強化、経営管理体制の強化、規制緩和、介護分野における競争条件を合わせるところからの見直しを指摘されている。
     高齢者福祉分野においては、2000年の介護保険法の施行により、利用サービスの選択肢が増え、様々なサービスを受けられるようになったが、2005年の介護保険法の一部改正に伴い、自己負担の増加や、サービス内容の変更により、介護者の重度化を招き、同居家族がいる場合、利用サービスが削減され、今までの生活を余儀なく変化させられ、ケアマネージャーによるケアプランも、地域包括支援センターによるケアプラン作成に変わり、今まで信頼を築き上げたケアマネージャーから別のケアマネージャーへ変更するなどの事態が生じた。これにより利用者や家族は自分の意思に反してケアマネージャーを変更するという大きな不安や精神的負担を生じ、さらにサービス利用の面でも負担を強いられる状況にある。この改正は、利用者・家族・福祉専門職の今までの関係性をバラバラにしてしまった。
     また、障害者福祉分野においても、障害者自立支援法実施後、福祉施設や事業所に支払われる報酬単価の引き下げにより、定額制が日割り制方式へと変更され、事業所の不安定な運営・経営状態が続き福祉施設や事業所で働く職員の雇用環境・労働条件の悪化による質の低下、福祉サービスの地域格差や利用料負担増のために、利用者や家族が経済的理由によるサービス利用を抑制する事態を招いている。
    これらは、措置制度時は、利用者・家族等の所得に応じた費用徴収制度が機能していたが、利用契約制度時は、応益負担・定率負担にあり、低所得者への配慮の必要性に欠けていると言える。
     こうしたなか、実際の福祉援助の場は、生活上の問題を抱える人たちを対象に行われている。多くの場合、そのような人たちは社会との関わりや日常生活の中での様々な問題や不安定は事情を抱えている。このような状況の中で過ごしている人達との生活全体に深く関わりながら、福祉活動を実践する福祉専門職者は、これらの援助を必要とする人達の生存権を保障すると共に、その人の個性を尊重し発達の可能を最大限に保障しなければならない。
    つまり、すべての福祉サービスに共通するのは生活支援である。福祉職員は利用者の能力を可能な限りを引き出し、今までの生活を維持し支えていくことである。事業者側の理念や経営も大事だが、専門職の一人一人の専門職としての自覚を求められている。利用者へのサービス提供を想定する際にも、今までの業務で培った経験を生かした、狭義の対人援助だけでなく、福祉従事者に共通して求められる専門性とそれぞれに求められるスキルの向上、福祉制度をより良いものに改善していく調査活動や政策作りを担う力、福祉運動、地域ネットワークを形成する力等の専門職としての能力を発揮するのも大事な役割である。
    また、施設側は、上にいる人の能力を高めるのはもちろんの事、下にいる人たちの能力を如何に高めるのかを考えなければならない。また、福祉労働・実践を通し、福祉サービスの市場化や事業所間の競争原理では守れない、人々の生命、健康、生活の維持、公的責任や人間の尊厳を保障する視点を多くの国民が持てるよう、活動し、福祉職員の日々の労働や労働組合運動、社会保障改善運動などを通して、地域住民の暮らしを広い意味で捉える目を持し、今後の社会福祉の担い手として職業的に自立し専門職として確立していかなければならない。
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