医療をめぐる法律問題について
現代における医療と法の関係を論じる場合、大きく分けて二つの側面からアプローチすることができる。
まず、第一に医療における患者の権利の確立に関する諸問題である。従来の医療は恩恵的・権威主義的色彩を帯びており、必ずしも患者の立場に立ったものではなかった。近時はこの点の反省の上に立ち、医師と患者の関係を権利義務に基づいた関係に変えていくことによって、適切な医療を確立していこうと動きが顕著である。例としては、患者の自己決定権の承認や、医師の医療過誤責任を追及する訴訟の増加などが挙げられる。第二は、近時の医学の急速な進歩により生じてきた一連の問題である。医学の急速な進歩は、従来では予想できなかった数多くの可能性を生み出し、人間の誕生や死亡をも医療技術によるコントロールのもとに置きつつある。体外受精や、クローン技術の向上、また、脳死や臓器移植問題などが例として挙げられる。
患者の自己決定権とは、医療過程における主体的な地位が患者に認められる、ということであり、インフォームド・コンセントが十分成り立った上で、診療上の重要な決定事項についての最終的判断は患者がなし得る...