緩衝液のpHの求め方
緩衝液のpHを求める場合、ヘンダーソン式である①式にpKa及び分子形の濃度、イオン形の濃度を代入する。
pH=pKa+log ……①(酸性物質の場合)
ただ、分子形の濃度、イオン形の濃度を求めて、ヘンダーソン式に代入すると計算過程が複雑になるため、緩衝液中の分子のモル数、イオンのモル数を代入してpHを求める方が簡便である。このことを踏まえて緩衝液のpHを求めてみよう。
緩衝液のpHを求める問題のパターン
パターン1
緩衝液のpHを求める。
(例:0.1 mol/L酢酸(pKa=4.76)と0.1 mol/L酢酸ナトリウムを含有する緩衝液が1L存在する)
酢酸(分子形)のモル数及び酢酸ナトリウム(イオン形)のモル数を計算し、①式に代入する。
酢酸のモル数=0.1 mol/L×1L=0.1 mol
酢酸ナトリウムのモル数=0.1 mol/L×1L=0.1 mol
pH=pKa+log =4.76+log =4.76
パターン2
緩衝液を調整後のpHを求める。
(例:0.1 mol/L酢酸液と0.1 mol/L酢酸ナトリウム液を2:3で混合し、全量500 mLを調整する)
酢酸(分子)のモル数及び酢酸ナトリウム(イオン)のモル数を計算し、①式に代入する。
酢酸液:酢酸ナトリウム液=2:3=200 mL:300 mL
酢酸のモル数=0.1 mol/L×200 mL=0.02 mol
酢酸ナトリウムのモル数=0.1 mol/L×300 mL=0.03 mol
pH=pKa+log =4.76+log
=4.76+log3-log2=4.76+0.48-0.3=4.94
パターン3
緩衝液に強酸(または強塩基)を加えた場合のpHを求める。
(例:0.1 mol/L酢酸(pKa=4.76)と0.1 mol/L酢酸ナトリウムを含有する緩衝液1Lに1.0 mol/Lの塩酸50 mLを加える)
酢酸緩衝液中に塩酸を加えた場合、緩衝液中で酢酸ナトリウムと塩酸が反応を起こす。そのため、緩衝液中で起こる反応式より、反応後の酢酸と酢酸ナトリウムのモル数を計算し、①式に代入する。
反応式
CHCOONa+HCl CHCOOH+NaCl
0.1 mol/L 1.0 mol/L 0.1 mol/L
1L 50 mL 1L
反応前 0.1 0.05 0.1
反応中 -0.05 -0.05 +0.05 +0.05
反応後 0.05 0 0.15 0.05
pH=pKa+log =4.76+log
=4.76+log1-log3=4.76-0.48=4.28
パターン4
緩衝液を調整後、強酸(または強塩基)を加えた場合のpHを求める。
(例:0.1 mol/L酢酸液と0.1 mol/L酢酸ナトリウム液を2:3で混合し、全量500 mLを調整後、1.0 mol/Lの塩酸50 mLを加える)
酢酸緩衝液中に塩酸を加えた場合、緩衝液中で酢酸ナトリウムと塩酸が反応を起こす。そのため、緩衝液中で起こる反応式より、反応後の酢酸と酢酸ナトリウムのモル数を計算し、①式に代入する。
酢酸液:酢酸ナトリウム液=2:3=200 mL:300 mL
反応式
CHCOONa+HCl CHCOOH+NaCl
0.1 mol/L 0.1 mol/L 0.1 mol/L
300 mL 50 mL 200 mL
反応前 0.03 0.005 0.02
反応中 -0.05 -0.005 +0.005 +0.005
反応後 0.025 0 0.025 0.005
pH=pKa+log =4.76+log =4.76+log1=4.76