最決昭和五八年九月二一日 刑法判例百選Ⅰ 72事件 間接正犯
【事案】
被告人は、刑事未成年者である養女(当時12歳)に暴行・脅迫を加えて、意のままに従わせ、金員を窃取させた。
【判旨】
養女が是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人は自己の日頃の言動に畏怖し、意思を抑圧されている同女を利用して窃盗を行ったと認められるのであるから、被告人について窃盗の間接正犯が成立する。
【解説の分析】
<論証の視点から>
解説において、全体の流れを三つにわけ、まずは①問題の所在として、本判決において何が争論となっていて、学説との対比をしながら本判決はどのような点において特徴的であるのかを述べ、次に②刑事未成年者の利用と意思抑圧に関する判例として、当該争点に関連するこれまでの判例の流れを紹介しながら判例の立場を整理している。最後に③本判決の評価として、著者の考えを述べている。以下で具体的に分析していく。
①まず、間接正犯と教唆犯の違いはどういった違いがあるのかを述べ、責任無能力者の利用について3つの説を紹介した上で、本判決は暴行・脅迫を加えて意のままにしていたことを理由に間接正犯を認め...