事例:
Xは、平成20年12月7日午後10時ころ、東京都千代田区神田神保町1丁目1番1号中華料理店「A」前路上において、Yに対し、いきなり刃物で顔面を切りつけ、全治3週間を要する顔面切創の傷害を負わせたという訴因で起訴されている。Xは捜査段階では犯行を認めていたが、公判では否認に転じている
設問1
X(被告人)の検察官調書中の、Sが「Xが当夜、神田神保町の路上でYを刃物で追っかけているのを見た。」と言っていたという部分は証拠能力を有するか。
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(1)本問におけるXの検察官調書(以下、検面調書という。)中の証言は証拠能力を有するか。当該証言を記載した検面調書に、法の定めた伝聞法則(320条1項)が適用され、証拠能力が認められないようにも思えるため問題となる。
(2)そもそも証拠能力とは、犯罪事実認定の資料として公判廷での取調べが許容されるための要件である。その認定に際し、一般に、①自然的関連性があり、②法律的関連性があり、③証拠禁止にあたらないことが要求され、本問では②が問題となる。つまり、証明力の評価を誤らせる事情がある場合には法律的関連性なしとなり、同意(326条)がない限り...