「社会福祉援助活動の意義と社会的機能について」
社会福祉とは、利用者の生活支援を目的とする施策の総称であり、社会を形成する全ての国民が生きる上で必要とする、衣食住などの基本的欲求が解消されるような生活状況をつくりあげることを目標とし、その達成に向け日常生活を送る上での障害となる生活面及び社会面において、社会福祉制度にもとづいたサービスや援助活動を展開するものである。ここでは、社会福祉援助活動の意義とその社会的機能について述べることとする。
まず、社会福祉援助活動の意義について述べる。制度としての社会福祉は、人間が生きていく上での目標行動に動機付けを与え、生活状況改善の条件整備へとつながるが、それはあくまでも目標達成のための仕組みである。社会福祉という制度自体は、現場で作られており、援助者の実施する援助とクライエントのニーズとの間に温度差がある。このことは、クライエントの個別性に対応できていない現状を指し示しており、制度がクライエント等の人間の自動制御、必要なサービス提供・支援力を持っているわけではないことがわかる。これらは、社会福祉援助活動という専門的な行為を介して初めて目的実現となる。
社会福祉援助活動は「ソーシャルワーク」と呼ばれ、人間関係に関する科学的知識や技術を基礎とする専門的福祉サービスであるとされ、個人やグループ、コミュニティなどが個人的または社会的な満足感や自立心を得るためにも有用されるものであるとされる。このソーシャルワークは、個別援助技術・集団援助技術・地域援助技術の3つを総称し専門的な援助活動を表したもので、19世紀後半のイギリスによって生まれ、アメリカで理論化された後高度な専門技術として成立し、わが国に導入されている。
社会福祉援助技術の実践方法として、金銭面及び物資などの公的扶助やソーシャルワーカーによる個別支援があげられ、ソーシャルワークの実践は利用者の権利を守る上で必要不可欠なものであるといえる。これに伴い、ソーシャルワークの実践的専門技術として、個別援助技術・集団援助技術・地域援助技術・社会福祉運営管理・社会福祉調査法・社会活動法・社会福祉計画法の7つがあげられる。このうち、前述の3つは社会福祉活動実践における専門的技術であり、後述の4つは前述の専門的技術をより効果的に展開するためのものといえる。ソーシャルワークにおける実践的専門技術は、実践方法をそれぞれの時代の利用者に合わせ変化し、それぞれの時代におけるソーシャルワーカーたちの努力や社会面・文化面・経済面における諸条件との相互作用などから、今日のような専門性が生み出され発展しているものであり、これらの専門技術はそれぞれ実践課題として専門分化及び総合文化が課題とされている。
現代社会において生活基準が向上する中、社会福祉の現状においても経済的な支援を求められる時勢から、多種多様性に富んだ非経済的な支援を求められる傾向へと変化が見られる。この変化は、利用者のニーズの正確や内容に多大なる影響をもたらし、より良い質を求められるものであるとされる。社会福祉におけるニーズは、価値観や権利意識などからなる社会福祉意識及び地域性や、利用者及びその家庭が存在する生活環境などの諸条件などにより大きく左右される物であるため、共通に規定される定義はないとされた分野にわたり論議が展開されるとともに試論が提示されているのが現状である。現代社会において、社会福祉に関する問題は多岐を極め、障害などにより個別の福祉ニーズを抱える児童、障害者、介護を必要とする高齢者、疾病者、生活困窮者、母子家庭などさまざまなニーズを持つ人々がいる。このため、単なる個人やその家族、地域の支援活動のみでは社会的におきる生活障害や生活破壊を防ぎ、生活を安定させるとともにより良いものへと発展させるということが困難となっている。こうした中で、生活困窮者を支援するべき公共施設が未整備であることによって福祉サービスを受けることができない状況に置かれていることも大きな問題になってきている。
社会福祉援助技術における独自的な社会機能として、個別化・主体的展開化・組織の連帯化・改良化の4点があげられ、その内容は次のようになる。
個別化とは、多数の人々が持つ共通的な福祉ニーズに対しより効果的に対応するための制度を個別化し、個人・家族・地域などにおける福祉性を高めるとともにそれらを守るための機能である。
主体的展開化とは、個々の利用者の主体性を支援するための相談業務・指導・育成・処遇・社会的援助活動などのサービスを提供し、個人・家庭・地域などにおける可能性を最大限に引き出すための機能である。
組織の連帯化とは、社会福祉機関及び施設やその他の関連機関がそれぞれ相互性を高めることで、社会福祉供給主体をより強い基盤とし、個人・家族・地域の福祉を高めながら同時にそれを守るための機能である。
改良化とは、社会的に阻害されている人々の福祉ニーズや諸権利の適性に有効な政策立案及び制度の改良や創設を促進するとともに、それらを活用し個人・家族・地域などにおける福祉性を高め守るための機能である。
また、社会福祉の実践面を担うソーシャルワーカーとしての機能面はそれぞれ専門援助的機能・運営管理的機能・社会変革的機能の3つに分類され、その内容は以下のようになる。
専門援助的機能とは、ソーシャルワークの利用者であるクライエントと直接向き合う場合に生じる生活問題の相談や、問題解決の過程での援助及び社会資源の利用を中心とし、ソーシャルワークの中心となる機能である。
専門援助的機能とは異なり利用者と直接向き合うのではなく、社会福祉が実践される「場と条件」の整備やソーシャルワーカーへの訓練及び指導を行う間接的な機能のことをさすのが運営管理的機能である。
社会変革的機能とは、専門援助的機能及び運営管理的機能のようなものではなく、現代における社会福祉問題における制度や行政の欠陥部分を見出し、この欠陥を正すというものであり、方法論としての機能となっている。
以上の3つの機能は互いに関連しあうことで効果を高め社会福祉をよりよいものへと改善するための重要な機能である。
以上のような諸機能を持って利用者の生活を支援するとともに保護することがこれらの機能の持つ重要な要素であるといえる。
現代社会において、人間としての生活構造や生活環境、価値観などはわが国の経済発展とともに急激な変化をみせ、その結果多様性に富む福祉ニーズを個々が抱えることとなっている。そのため、ソーシャルワークが個々の福祉ニーズに対応し利用者の生活の改善や向上を図るだけでなく、社会福祉制度の改良化及び新たな発展性を見出すことがこれからの社会福祉においてきわめて重要となる。
参考文献
中島恒雄 『新・社会要説』 ミネルヴァ書房 2006
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R3E 木村 翼