「社会的事象に興味・関心をもって取り組み、確かな学力を身に付ける社会科授業の在り方について」
現代社会では、わが国のみならず諸外国に目を向けられる人間、またわが国の歴史を知り愛情を持てる人間の育成が求められている。それを育成するのは、小学校学習における社会科であり、重要な意味を持つ学習といえる。ここでは、小学校学習における社会科の授業について以下のように述べる。
1.小学校社会科の目標 小学校教育課程における社会科の役割及び目的は、小学校学習指導要領の社会科の目標において、「社会生活においての理解を図り、わが国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」、として示されている。
これは平成10年に公表された学習指導要領の内容であるが、平成20年に公表された学習指導要領においても、ほぼ同様のものが使用されている。
小学校社会科の目標において「理解と愛情を育て」までの部分は、小学校における社会科のねらいを示しており、地域社会内において子どもが普段目にしている人々の生活体型やその特色、またわが国の国土と歴史に対し理解を深めるとともに愛情を持てるような育成法が重要となる。
また、「基礎を養う」までの部分は、小学校のみならず中学校においても共通するねらいであり、生涯を通じて学習する上でのねらいといえる。
2.主体的な学習の必要性
社会科の目標を達成する際に重要となるのが、子どもの主体的な学習である。これを指導する際、留意すべき点について、次の3点を示すこととする。
まず第1に、知識偏重型の教育内容としないことがあげられる。 机上で覚える学習も大切ではあるが、これを子どもの生涯に活かすことが出来なければその学習は何の意味も持たないものとなる。そのため、日々変化する社会的事象を子どもがその目で捉え、自ら考え学ぶことが必要となる。
第2に、社会科における学習対象とは、子ども自身の社会生活である、という点があげられる。社会とかかわる中で、人々の生活に密接な関連性を持ち、同時にその特色をつかみながら産業及び環境について学習することが、社会科学習における条件となる。
第3に、社会科では体験的学習及び観察・調査活動が必要不可欠である、という点があげられる。社会科を学ぶ上で、単に教師の説明を聞き、それを知識として身に付けるのではなく、子ども自ら行動することが求められる。
平成10年の教育課程審議会答申では、社会科、地理歴史科、公民科の改善における基本方針として、知識偏重型で網羅的な学習ではなく、学び方や調べ方の学習、体験的な学習、問題解決能力の育成、といった子ども主体の学習展開が重視されている。この内容は平成20年の中央教育審議会答申においても同様で、これらの学習展開を一層重視することが目的とされている。
社会科の目標を達成するためには、子どもが主体となって学習しその学習内容を自らの力に出来るような授業が求められているのである。
3.主体的な学習の指導方法
ここでは、実際に子ども主体の学習活動を実施する際の学習内容をいくつかあげる。また、学習活動実施時に指導上留意すべき点をあげることとする。
(1)学び方や調べ方の学習
これはどのような内容の学習であっても必ず取り入れられるべき学習活動である。この学び方及び調べ方の学習における具体的な展開としては、「観察活動」「調査活動」「資料収集活動」「見学活動」があげられる。これらの4点について、次のように述べる。
まず観察活動には、生活地域の地形の観察や、工場観察、生活地域に密着する遺跡の観察などが当てはまる。これは学習内容によって変化するものであり、社会科学習において「子どもに何を学ばせるべきか」を重視し、社会的事象の具体的な理解を促すための活動といえる。
次に調査活動がある。これには、生活の中で普段目にする道路上の設置物や車の通行量、商店へのインタビューが該当する。ここでは、社会的思考能力を養うことを目標とすべきである。
次に、資料収集活動がある。これは授業内で出された学習問題に対し、それを解決するために必要となる資料を収集する活動である。この収集活動では、図書館で文献を調べまとめること、またインターネットで必要な情報を見てまとめることが実施内容として考えられる。これらをまとめることで、資料活用に必要な能力を育てるだけでなく、問題解決能力の基盤も育成できるため、子どもが考え自らの力で学べるような問題提起をすべきである。
最後に見学活動がある。これは、上記3点の活動内容を含む広い活動概念となるため、子どもが興味・関心を持つことの出来る見学活動を実施すべきとなる。
(2)体験的な学習
これには、現代社会において実際に行われている活動に参加すること、またわが国の歴史内で行われて来た活動を模擬的に行うことが該当する。前者では、商店で実際に販売を体験する活動や、地域の清掃活動に参加すること、などが活動内容となり、後者では紙すき体験や機織り、バケツで稲を育てる活動などが活動内容となる。 これらの体験的な学習は、子どもの興味・関心を高めるとともに意欲的に活動に参加できるものになると考えられる。そのため、体験的活動を通じて「何を学ぶのか」ということを明確にし、その活動目的を忘れないよう指導することが重要となる。
(3)学び合いの学習
これには、子どもが実際に調べた内容及び考えた内容を、グループ及び学級全体で話し合うことが該当する。これは社会科学習において重要な活動内容であり、子どもが自らの考えや意見を自由に発想し、仲間に対して話をする場となる。そのため、教師対子どもではなく、子どもの主体的な問題解決及び見解を高めるのに効果的となる。
また、ポスターや新聞などを作成し発表する活動も重視すべきである。これは子どものプレゼンテーション能力の育成に役立つだけでなく、考え学んだ内容を形に表すことで、子どもの興味・関心を今後の学習に活かすための基盤作成にも活用できるものとなる。
これらの学習活動だけでなく、学習目的に沿った展開及び活動を設定することで、子どもがより有意義に社会科学習を行えるようになるのである。
以上のように、子どもが社会的事象に対し興味・関心をもって取り組み、自らの力とするまでの過程を築くための学習が社会科において求められる。社会科の目標を達成するためにも、これまでに述べた指導方法を授業内に取り入れ、教師から一方的に授業を強制するのではなく、子どもが主体的に学べる学習を展開することが必要なのである。
R2F 大岡曜一郎