『火の昔』について
柳田國男は、「火」というものを通して、国民が作り上げてきた文化について語ろうとしていた。「文化という言葉は、このごろよく耳にするけれども、それはどういうものかを説明し得る人は存外に少ない」と柳田は述べており、彼は自ら文化と考えられるものをいくつか例にとって、そのものによって、文化という言葉をなるべく使わずに文化を説明しようとした。そしてその最もはっきりしているものとして火を選び、火によって文化というものを論じようとしたのである。火を選んだことについて柳田は、「世の中が進んだということ、今が昔とくらべてどのくらいよくなっているかということを考えてみるのには、火の問題が一番...