江戸時代を代表する風景画浮世絵師といえば、必ず名前の挙がる葛飾北斎(一七六〇〜一八四九)・安藤広重(一七九七〜一八五八)であるが、二人の作品の特徴を簡単に述べる
とすると、「動」の北斎・「静」の広重といった感性の違いであろう。
「浮世絵」とこの時代背景を説明しながら、二人の作品の違いを説明したい。
この「浮世絵」は『江戸学事典』の記述によれば、「無常の現世を意味する「浮世」のあらゆる事象をありのままに筆をまかせて描写した風景画の総称」とある。それまで宗教的・古典的で、武家・貴族・僧侶らが鑑賞を楽しむという高尚なイメージであった日本美術を、時代の九八)であった。
師宣の時代は墨一色の墨摺り絵が主であったが、その後時を経て二色刷りの紅絵、そして鈴木春信(一七二五〜一七七〇)で知られる。多色刷りの錦絵まで発展した。そしてこの進歩に伴い、木版は多くの複製が作れるようになった為、経済的に余裕ができた町人がお手軽にこの浮世絵を購入できるようになっていく。
このようにして絵を見る楽しみ、又は絵から知識を得るということを、一般の庶民層が享受できるようになったのである。
浮世絵は初期、当時の歌舞伎役者や美人画といった人物画が描かれていたが、その後江戸に五街道が開通したこともあり、小林克氏によると、「庶民がお伊勢参りなど巡礼めぐ
りなどの旅をするというブームが起こった」(参考文献百四十一頁)とあり、これによって浮世絵も風景画が流行しだした。
そこでこの江戸後期になって、風景画浮世絵師として名を挙げるのが、北斎・広重である。
二人の有名な作品として、北斎は『富嶽三十六景』(一八三一)、広重は『東海道五十三次』(一八三四)が挙げられる。二人の作品はいずれも風景画であるにもかかわらず、見るものが、受ける印象は対照的である。しかし二人に共通している部分もある。
「動」の北斎・「静」の広重
序文 江戸時代を代表する風景画浮世絵師といえ ば、必ず名前の挙がる葛飾北斎(一七六〇~
一八四九)・安藤広重(一七九七~一八五八) であるが、二人の作品の特徴を簡単に述べる
とすると、「動」の北斎・「静」の広重といった感 性の違いであろう。
「浮世絵」とこの時代背景を説明しながら、二人の作品の違いを説明したい。
浮世絵 この「浮世絵」は『江戸学事典』の記述によれば、「無常の現世を意味する「浮世」のあら
ゆる事象をありのままに筆をまかせて描写した 風景画の総称」とある。それまで宗教的・古典
的で、武家・貴族・僧侶らが鑑賞を楽しむという高尚なイメージであった日本美術を、時代の
九八)であった。
師宣の時代は墨一色の墨摺り絵が主であっ たが、その後時を経て二色刷りの紅絵、そして
鈴木春信(一七二五~一七七〇)で知られる 多色刷りの錦絵まで発展した。そしてこの進
歩に伴い、木版は多くの複製が作れるように なった為、経済的に余裕ができた町人がお手
軽にこの浮世絵を購入できるようになっていく。
このようにして絵を見る楽しみ、又は絵から...