この章では、調査データの解釈に強引な点がないかどうかを検討してみたいと思う。なお、この見解はくもん子ども研究所側が、文部科学省の調査を基にして出した解釈のようである。
まず、「勉強が好きでないのは、勉強する意味がわからず、勉強することでもたらされる成果が見出せないからではないか。」としているがどうであろうか。Q1の勉強が好きかどうか、という質問では、好きでない、もしくはどちらかといえば好きでないという生徒は小5では約50%。中2では76%に上っている。では、Q2の勉強は大切かどうか、という質問では、大切だと思う、もしくはどちらかといえば大切だと思うと答えた子どもは、小5で約86%。中2でも約82%という高い数値を示している。また、Q5の勉強すればふだんの生活や社会で役立つかどうか、という質問では、役立つと思う、もしくはどちらかといえば役立つと思う、とする子どもは、小5では80%以上。中2でも66%に及んでいる。この三点から考えてみると、上記の網掛け部分のような解釈にならないように思う。子どもたちは、勉強を大切だと思っているし、そのことが普段の生活や社会に出てからも役立つというということを、半数以上の子どもが理解、認識している。とすれば、勉強する意味がわからない、という見解は少々ずれていると考えられる。子どもたちは、「勉強の大切さや、ある程度の意味をわかっているけれども、それでも勉強が好きになれない」という考えがより適切なのではないだろうか。
そして、「授業の内容を理解するためには、家庭学習が欠かせないが、家での勉強時間が30分未満の子どもが約3割にのぼり、授業を理解できる子が減っている原因がここにもあるようです。」という解釈を検討してみたい。
【 教育調査批評 -批判的検討-】
1、はじめに
今回、既存の教育調査を批判的に批評するということで、あえて疑問の目を持って調査の方法や結果を見ていくことにした。自分の浅い見識では批判することに無理があるように感じた点もあるが、素人の目から見ても分かりやすい調査結果を示すことは大切な要素であると考えてこの課題に取り組んでみた。
2、検討する教育調査
日本公文教育研究会が出版している『教育を考える』の創刊号より、「学習意欲調査 結果報告」に掲載されていたものを対象とすることにした。詳細は以下の通りである。
【子どもの学習意欲は本当に低下しているのか】という問題を見るために、以下の調査を利用。
① 文部科学省調査より一部抜粋
調査目的:児童生徒がどの程度、学習内容を理解しているか、指導上の問題点は何かを明らかにする。
調査時期:2002年1月
調査対象:全国の小5から中3生
※この会報誌では、主に小学5年と中学2年のデータを比較
回収数 :小学生…約21万人 中学生…約24万人
質問内容:
Q1、勉強が好きだ
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