序論
自閉症がアメリカの児童精神科医レオ・カナーによって、報告されてから半世紀がたった。
自閉症は長期にわたって持続する障害である。よく「自閉症児は分からない」といわれる。
しかし分からないのは、何も自閉症児に限られたことではない。子どもたち、特に障害を持った子どもたちを見ると、「分かる」とか「分かっている」というのは物事が自分の思い通りに動いていることを指しているにすぎない。近年、児童精神医学の研究成果は、障害について多くの新しい概念を提供するに至り、それに伴ってさまざまな治療方法が生み出されている。このことは喜ばしいことであるが、現在の社会機構の複雑さが、それまでの社会においては問題とされなかった子どもを、不適応な存在として顕在化させた。
分からないことは分からないこととして認め、変化を急ぎすぎない、そのことが子供を尊重するということの一番大切な意味である。
自閉症とは
自閉症とは他人とつながりを持つことが困難な障害である。特に重度の自閉症児の場合は、症児と他者がまず対峙できるための条件を模索するところから始めなければならない。
そのためには、彼らが他者との関係で構成す...