イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」
生命の躍動感あふれる登場人物と比して、白銀の甲冑まとい誰よりも孤
高で格調高い彼の中身はカラッポ・・・
誰よりも強く美しい人物が実は心の中にストックを持っていない。周りの人
間がどうにも生き生きしているようで空しさがつのる。
作者イタロは寓話として描いているけれど、きらびやかなペルソナをかぶり
日々暮らしているが、中身を振り返れば豊かな心とは言えないと気付く人
は現代にも、いや現代にこそたくさんいると思う。
「木のぼり男爵」
極エキセントリックな姉の作ったエスカルゴ料理を拒絶して木の上へエスケ
ープして以来、生涯樹上で過ごしたコジモ少年の一生の物語。失わ...