何故、捕虜収容所では「煙草」貨幣の役割を果たしていたのか。結論から述べると収容所には貨幣が存在せず、仮にあったとしてもその価値がないからである。
貨幣には「不換紙幣」と「商品紙幣」の2種類がある。「不換紙幣」とは今
現在私たちが使っている一万円札や千円札などの事であり実質的な価値のな
い紙切れのことである。これに対し「商品貨幣」とは、そのもの自体に実質的な価値が存在するものであり、例えそこの社会制度が崩壊したとしてもその貴重さを保ち価値を失わないものである。本問の収容所の中での「煙草」というのもこの「商品貨幣」の一種であり、世間一般でいう貨幣の代用として扱われていたのである。
かつての日本は銅銭が通貨として流通していたが、その信用力が低下し穀物や織物が貨幣の代用となり、ポルポト政権崩壊後のカンボジアでは米が貨幣の代用となっていた。こうして歴史的に「代用貨幣」を見てみると、以下の二点が特徴として挙げられるのではないだろうか。一つに、代用貨幣というのは消費はできるが一度に一定以上消費しない。若しくは耐久消費財であることが多い。二つに、代用貨幣となるものは誰でも貰うことを拒まない...