ソーシャルワーカーの倫理観

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    ソーシャルワーカーの倫理観、価値観として基準となるものに、1986年に日本ソーシャルワーカー協会が宣言した『ソーシャルワーカーの倫理綱領』がある。これは価値と原則、そして1.利用者に対する倫理責任・2.実践現場における倫理責任・3.社会に対する倫理責任・4.専門職としての倫理責任とに分けられている。
     人間は性別、年齢、国籍、宗教などの違いで優劣をつけられるものではなく、その違いは個性としてのその人らしさである。ソーシャルワーカーは、どのような違いを持った人々にも援助をするべきである。これが価値と原則に示されている。
     利用者に対する倫理責任とは、自分の利益のためにその立場を利用せず、相手の利益を優先とし、あるがままを受け入れることを言う。このような視点を持つためにはまず自分自身についての理解や振り返りが必要であろう。そして相手に対し説明をして、自己決定ができるよう援助を進めていく。つまりここで言う援助とは、『やってあげる』ことではなく、相手が自分で決めて進むことを『支える』ことであると考えている。
     実践現場における倫理責任とは、業務を進めていく上での基準であろう。利用者に対して援助を進めていくと、組織に属するソーシャルワーカーはしばしば、利用者と組織との間で板ばさみになる事態に直面する。その際に基準がないと、自分のするべき援助とはどのようなものか見失ってしまう。それを防ぐために必要である。
     社会に対する倫理責任とは『すべての人々を孤立や孤独、排除、摩擦から援護し、社会の一員として包み、支えあう』というソーシャルワーク・インクルージョンの実現を目指すことである。利用者がよりその人らしく生活できるよう、法制度の制定や改正に対して働きかける必要がある。また、その働きかけは広く国際社会にも及ぶことが求められている。
     専門職としての倫理責任は、自己がソーシャルワーカーとしてどのようにあるべきかを述べている。自己の専門性を向上させるため、日々学習をすることはもちろんだが、他のソーシャルワーカーが困っているときは助け、過ちを犯していると感じたら本人にそのことを知らせる態度や、スーパーバイザーとして当たる後輩への指導も含まれており、自己の専門性を保つだけではなく、他のソーシャルワーカーに対しても働きかけていかなければならない。
     人を助けたいと行動することはボランティアとして誰でもできることである。専門職として援助をしているのであれば、その援助の内容に責任を持たなければならない。しかし専門性という漠然としたものに責任を持つことは難しい。確固たる基準である『ソーシャルワーカーの倫理綱領』があるのであれば、その基準に沿って行動することがその専門性といえるだろう。

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