「発達の概念や理論及び発達における諸問題について述べよ。」
1、はじめに
「発達」とは、受胎から死に至るまでの生涯にわたる心身の獲得的・衰退的変化をいう。発達は、人間が生まれつきもっているプログラムに沿って時間を追って変化していく過程である「成熟」と、生まれた後の経験による変化である「学習」との、両方の影響を受けて進んでいく。
発達には、「量的」側面と「質的」側面がある。量的な発達とは、身長の増加や体重の増加、語彙数の増加といった、何らかの量の増減として表せられる発達を指す。また、質的な発達とは、思春期には男性的あるいは女性的な身体つきになっていくことや、言語を伝達の手段のみとしてではなく、思想や自己の行動コントロールのために用いるなどの量では表せないが、明らかな質的な差異がある発達を指す。
「発達段階」とは、他の年齢時期とは異なる特徴を持っている年齢時期のまとまりをさす。
また、それぞれの発達段階において、「人間が健全で幸福な発達を遂げるために各発達段階で達成しておかなければならない課題」であり、「次の発達段階にスムーズに移行するために、それぞれの発達段階で習得しておくべき課題」があると教育心理学者のJ.ハヴィガーストは考え、これを「発達課題」とした。様々な心理学者がそれぞれの発達課題を提言しているが、その内容は一様ではない。
以下に著名な人物の発達段階説を挙げ、それぞれの問題点について考察する。
2、J.ピアジェの発達段階説
ピアジェは、子どもの認識能力の発達を研究し、次の4つの段階区分を提起している。
①感覚運動期(生後2年間):言葉や記号を使わないこの時期には、実際に見たり触ったりして、自分の身の回りに起こっていることを理解し、外の世界と自分が別々であることに気づく。また、生得的な反射が身体活動の中心である時期から、自発的な身体活動が急激に増大する。さらに、自分の身体活動がもたらす外界の変化を再生させるために身体活動を反復する、「循環反応」が現れる。これは感覚と運動の結びつきが発達しているからである。
②前操作期(2~7歳):この段階からは、思考に直接的な身体活動を必要としない、表象的思考期となる。この時期には、直接目の前にないものをイメージとして構成することのできる象徴的思考が芽生える。しかし、まだまだ物の見かけによって惑わされやすく、複数の観点から物事の特徴をつかむことは苦手である。自分の立場からしか物事を理解できず、相手の立場に立つことができない「自己中心性」をもっている。この時期には、以上のような直感的思考が支配的となる。
③具体的操作期(7~11歳):この時期には、具体的状況や日常的活動において、論理的思考ができるようになる。自己中心性も減退する。また、ものの数や量、重さなどは、それを増減しない限り、変化しないといった概念(保存)を認識する。
このように、かなり論理的な思考ができるようになるが、物事の見かけに左右されやすく、抽象的な思考はまだ簡単にはできない。
④形式的操作期(11歳~):この時期には、具体的内容を無視して論理的操作の思考ができるようになる。このような形式的操作による思考を、仮説演繹的思考と呼ばれる。以降、絶対的な知識の量を増やしていくことはできるが、考え方の形式自体は完成する。
ピアジェの発達段階説の問題点:子どもの発達は年齢だけに左右されず、環境や訓練によって人為的にコントロールすることができるが、ピアジェの発達段階説にはこの要因に対する説明がなされていないと指摘されている。また、現在、子どもの能力
「発達の概念や理論及び発達における諸問題について述べよ。」
1、はじめに
「発達」とは、受胎から死に至るまでの生涯にわたる心身の獲得的・衰退的変化をいう。発達は、人間が生まれつきもっているプログラムに沿って時間を追って変化していく過程である「成熟」と、生まれた後の経験による変化である「学習」との、両方の影響を受けて進んでいく。
発達には、「量的」側面と「質的」側面がある。量的な発達とは、身長の増加や体重の増加、語彙数の増加といった、何らかの量の増減として表せられる発達を指す。また、質的な発達とは、思春期には男性的あるいは女性的な身体つきになっていくことや、言語を伝達の手段のみとしてではなく、思想や自己の行動コントロールのために用いるなどの量では表せないが、明らかな質的な差異がある発達を指す。
「発達段階」とは、他の年齢時期とは異なる特徴を持っている年齢時期のまとまりをさす。
また、それぞれの発達段階において、「人間が健全で幸福な発達を遂げるために各発達段階で達成しておかなければならない課題」であり、「次の発達段階にスムーズに移行するために、それぞれの発達段階で習得しておくべき課題」...