文学部共通概説 英文学
私はシェイクスピア『ソネット詩集』の「第18番」の訳詩の中では、Cの竹友藻風氏の訳が気に入った。竹友氏の訳は4つの訳詩の中では唯一文語調で、読みにくい印象を受けたが、この訳詩が4つの中で一番優れていると思う。
まず、この詩は3行目から8行目にかけて「夏の日」を描いている。そして、9行目以降はその「夏の日」と比較した「君」について述べている。この8行目と9行目の話題の切り替えが一番伝わりやすいのが竹友氏の訳である。9行目の最初を「だが君の」としている西脇氏訳・院生訳や、「しかし、きみが」としている高松氏訳に比べ、「されど君、君が」としている竹友氏の訳詩は「君」を2回繰り返すことで「君」を強調し、作者の視点が「夏の日」から「君」に移ったことを明確に表現している。この視点の切り替えが最も明確になっている点が、私がこの竹友氏の訳詩を気に入った理由のひとつである。
もうひとつ、私がこの竹友氏の訳詩で気に入った点は、7・8行目の”And every fair from fair sometime declines, / By chance, o...