罪刑法定主義とは、どのような行為が犯罪として処罰されるか、及びその場合どのような刑罰が加えられるか、その行為が行われる以前に法律でその行為を犯罪とし、かつ、それに対応する刑罪の種類・程度が定められていなければならないとする原則で、「法律なければ犯罪なく、刑罰なし」という標語で表される。
歴史的には、専制国家における恣意的な刑罰権行使から解放されるべく、市民革命を通じて確立された近代自由主義国家における刑法の基本原則である。その淵源は不文法主義をとる1215年のイギリスのマグナカルタまで遡る。これがアメリカに渡って、独立宣言や権利章典を得て、合衆国憲法修正5条に結実したとされている。
一方、成文法主義をとるヨーロッパ大陸では、1789年のフランス革命時の人権宣言八条において、初めてこの原則が姿を見せ、その後、ナポレオン刑法典を通じてヨーロッパ大陸に広く導入された。
我が国では、ボアソナードの助言により、旧刑法二条を規程として罪刑法定主義を採用した。日本国憲法31条・39条にあらためて罪刑法定主義に関する規定をおいているのだが、刑法上最も重要な原則であるので刑法典に明文規定をおくべ...