従来、小売店舗の売上予測を行う際に頻繁に用いられてきた重回帰分析では小売店にとって操作可能なプロモーション活動は独立変数として考慮されてきたが、操作不可能な要因の効果は直接測定が出来ないので、定数項として捉えられてきた。しかしながら、慣習的購買を何らかの周期を持って消費者が行っているとするならば、その効果を定数項として捉えるのではなく、周期を考慮して計算をする必要があると考えた。本稿ではこのような仮定が成立することを既往の文献調査から提示し、実際のデータを用いて検証を試みたものである。
小売店舗の売上予測に関する分野において、過去の研究をレビューし、筆者が推察する事象と各理論の特徴から推察される事象から仮説を設定し、実証的検証を経てその仮説の妥当性を示した点については、かつての研究成果にも事例が少ないことから大いに評価できるところではないだろうか。しかしながら、本研究では消費者行動をもとに研究を進め
ているものの、消費者を「属性」で分けて検討しているものではなかった。それは、例えば、専業主婦と有職主婦とでは購買周期や購買する商品カテゴリーに差異が生じることが推測される。このことからも、より精緻化したモデルを構築するには、購買周期に寄与する「属性」を考慮し、この消費者属性ごとにサンプルを分けてモデルを作成することが必
要なのではないだろうか。
■題材論文■
店舗の売上と消費者の購買習慣
清水聡(2004 )『消費者視点の小売戦略』第5章より
1.研究内容の要約
1)目的
一般に、消費者の小売店舗での購買方法には2種類あると考えられている。
① 小売店の行うプロモーションにより誘発される変動的な購買 (例:チラシ広告をみて
購入、衝動買いなど)
② 消費者が普段から慣習的に行っている購買 (例:ストアロイヤリティをもとに継続購
入)
小売業にとって、プロモーション活動は操作可能な要因であるため、変動的な購買はあ
る程度小売業側で影響を与えることができる。それに対して、慣習的な購買は小売店、及
び企業側では制御することが難しい要因である。
従来、小売店舗の売上予測を行う際に頻繁に用いられてきた重回帰分析では小売店にと
って操作可能なプロモーション活動は独立変数として考慮されてきたが、操作不可能な要
因の効果は直接測定が出来ないので、定数項として捉えられてきた。しかしながら、慣習
的購買を何らかの周期を持って消費者が行っているとするならば、その効果を定数項とし
て捉えるのではなく、周期を考慮して計算をする必要があ...