モンゴル帝国

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    資料紹介

    まずは、牧畜農民が持つ特徴について見ていこうと思う。牧畜農民が持つ特徴を大きく分けると、五つに分けることができると考えられる。
    一つ目に、移動しながら生活を送るということ。一箇所に定住することなく、一年間を通じて何度か移動しながら、主に牧畜を行って生活を立てている。多くの場合、1家族ないし数家族からなる小規模な拡大家族単位で家畜の群れを率い、家畜が牧草地の草を食べ尽くさないようにその回復を待ちながら、定期的に別の場所へと移動を行う。冬では数十から数百の家族単位で集団生活を営むことが多い。二つ目に、徹底した実力主義であるということ。指導者は絶対であり、能力のある者が話し合いで選出されるようになっている。また、能力があれば異民族でも受け入れて、手厚くもてなす。三つ目に、人命(人材)を尊重するということ。情報を重視し勝てない相手と戦うことは少なく、また、実際の戦闘はなるべく行わず、指導者間の交渉で解決することも多い。四つ目に、社会が非完結ということ。社会の維持に非遊牧世界の技術・製品・税を必要とするため、領域内に農耕都市を抱え込んでいる。遊牧民はミルク・毛皮・肉などを入手することは容易だが、穀類や、定住を要する高度な工芸品を安定的に獲得することが困難である。そのため多くの場合、遊牧民の牧地の近辺には定住民、特に農耕民の居住が不可欠なのである。遊牧民は移動性を生かして岩塩や毛皮、遠方の定住地から遊牧民の間を伝わって送られてきた遠隔地交易品などを運び、定住民と交易を行ってこれらの生活必需品を獲得してきた。遊牧民にとって交易活動は欠かせないのである。そして最後に、生活様式がそのまま武力に直結しており、戦闘能力が高いということ。普段から、馬を使う生活を送っており、また狩りには弓を使用するため、男女を問わず騎馬と騎射に優れている。
    これらの特徴は、人口が少ないため合理性に基づいた答えである。抱え込む農耕都市が増加し、支配下の都市間が交易などにより文化的・経済的に一体化することによって広域国家が発生していったのである。
    次に、こういった牧畜農民の特徴が、モンゴル帝国の拡大にどのように関わっていたのかを見ていこうと思う。
    モンゴル帝国での社会では、モンゴリアの遊牧国家の伝統に従い、支配下の遊牧民を兵政一帯にしていた。遊牧集団の基本的な単位は千人隊といい、1000人程度の兵士を供出可能な遊牧集団を領する将軍や部族長が、その長(千人隊長)に任命され統率していた。千人隊の中には100人程度の兵士を供出する百人隊、百人隊の中には10人程度の兵士を供出する十人隊が置かれていた。
    また、モンゴル帝国の軍隊でも、千人隊・百人隊・十人隊に基づいて形成された。遊牧民の社会単位でもある千人隊は、日常から各隊は長のゲルを中心に部下のゲルが集まって、円陣を組むクリエンという社会形態をつくって生活を送っていた。彼らは遊牧を共同して行うとともに、ときに集団で巻狩を行って団結と規律を高めたりしていた。軍団は厳格な上下関係に基づき、兵士は長に絶対服従を求められ、千人隊長は自身を支配するハーンや王族、万人隊長の指示に従う義務を負った。
    戦闘時には、右翼・中軍・左翼の三軍団に編成された。これはモンゴリアにおける平常の遊牧形態を基本としている。また、おのおのの軍団は先鋒隊、中軍、後方輜重隊の三部隊に分けられた。個々の兵士は全員が騎馬兵であり、速力が高く射程の長い複合弓を主武器とした。主力の軽装騎兵によって敵を遠巻きにし、弓で攻撃して白兵戦を避けつつ敵を倒していった。遊牧民は幼少の頃から馬上で弓を射ること

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    まずは、牧畜農民が持つ特徴について見ていこうと思う。牧畜農民が持つ特徴を大きく分けると、五つに分けることができると考えられる。
    一つ目に、移動しながら生活を送るということ。一箇所に定住することなく、一年間を通じて何度か移動しながら、主に牧畜を行って生活を立てている。多くの場合、1家族ないし数家族からなる小規模な拡大家族単位で家畜の群れを率い、家畜が牧草地の草を食べ尽くさないようにその回復を待ちながら、定期的に別の場所へと移動を行う。冬では数十から数百の家族単位で集団生活を営むことが多い。二つ目に、徹底した実力主義であるということ。指導者は絶対であり、能力のある者が話し合いで選出されるようになっている。また、能力があれば異民族でも受け入れて、手厚くもてなす。三つ目に、人命(人材)を尊重するということ。情報を重視し勝てない相手と戦うことは少なく、また、実際の戦闘はなるべく行わず、指導者間の交渉で解決することも多い。四つ目に、社会が非完結ということ。社会の維持に非遊牧世界の技術・製品・税を必要とするため、領域内に農耕都市を抱え込んでいる。遊牧民はミルク・毛皮・肉などを入手することは容易だが、...

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