民法判例―利息制限法と利息債権①
論点「任意に支払われた法定の制限超過の利息・損害金は元本に充当さ
れるか?」
①最高裁判所昭和36年6月13日 大法廷判決
<判決要旨>破棄差戻
「債務者が利息制限法所定の制限を越える金銭消費貸借上の利息・損害金を任
意に支払ったとき、右制限を越える金員は、当然、残存元本に充当されるべきも
のと解するべきではない。」
*利息制限法の規定
1条1項「金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率に
より計算した金額を超えるときは、その超過分につき無効とする。」
元本10万円未満 20%/年
元本10万円以上100万円未満 18%/年
元本100万円以上 15%/年
2項「債務者は、前項の超過部分を任意に支払ったときは、同項の規定にか
かわらず、その返還を請求することはできない。」
4条1項「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による損害賠償の予定は、
その賠償額の元本に対する割合が第1条1項に規定する率の 1.46倍を
超えるときは、その超過部分につき無効とする。」
2項「第1条2項の規定は、債務者が前項の超過部分を任意に支払った場合
に準用する」
2条「利息を天引した場合において、天引額が債務者の受領額を元本として前条
第1項に規定する利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分
は、元本の支払いに充てたものとする。」→天引の利率超過分は元本充当と
みなす。
<事実の概要>
原告Aは、連帯保証人A₂~A₄ト共にBから140万円の金銭消費貸借契約を
締結した。その際、「昭和29年8月13日、140万円借りる。弁済期限:昭
和29年9月11日。期限後損害金:100円につき9銭/日、債務不履行時に
は強制執行が可能」という内容を記した公正証書を作成していた。実際には、利
息は年率8%という合意が為されていたが、利息制限法に抵触するため、公正証
書には明記していなかった。契約後、BはAに対し、最初の1ヶ月分の利息を天
引した元本 128.8 万円を交付した。
昭和29年9月24日から昭和30年12月10日において、Aは8回に分け
て合計142万円をBに弁済した。内訳は、元本弁済として2回計 76.2 万円、
損害金として5回計 51.1
万円、指定が無いものが1回 4.65万円であった。
昭和32年4月19日、BはAの債務不履行を理由とする強制執行手続をとっ
た。(別訴で、連帯保証人A₂~A₄がこの強制執行不許請求の異議申立てを行って
いた。)強制執行による売得金交付に伴う支払として、Aは 19.08 万円をさらに
Bに交付した。これにより、Aの支払総額は 161.43 万円になった。これに対し
て、Aが、公正証書上の債務は弁済により既に消滅しているとして債務不存在確
認の訴えを提起した。
<原審判断>
Aが利息制限法に定める制限を超過した利息・損害金を任意に支払った場合、
その支払の約定は無効(利息制限法1条、4条2項)である。よって、超過部分
は利息・損害金としての弁済たる効力をもたず、返還請求も為しえない。しかし、
弁済期限前であり、なお元本債務が存在するならば、元本充当するべきであり、
充当後は 7000 円弱の過払いが生じる。これにより、公正証書上の債務は弁済に
より全て消滅していると判断した。
Bがこれを不服として、上告した。上告理由として、残存元本がある場合に限
って、任意支払の利息・損害金の過払い分の返還請求ができないと解する根拠が
無いと
民法判例―利息制限法と利息債権①
論点「任意に支払われた法定の制限超過の利息・損害金は元本に充当さ
れるか?」
①最高裁判所昭和36年6月13日 大法廷判決
<判決要旨>破棄差戻
「債務者が利息制限法所定の制限を越える金銭消費貸借上の利息・損害金を任
意に支払ったとき、右制限を越える金員は、当然、残存元本に充当されるべきも
のと解するべきではない。」
*利息制限法の規定
1条1項「金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率に
より計算した金額を超えるときは、その超過分につき無効とする。」
元本10万円未満 20%/年
元本10万円以上100万円未満 18%/年
元本100万円以上 15%/年
2項「債務者は、前項の超過部分を任意に支払ったときは、同項の規定にか
かわらず、その返還を請求することはできない。」
4条1項「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による損害賠償の予定は、
その賠償額の元本に対する割合が第1条1項に規定する率の 1.46倍を
超えるときは、その超過部分につき無効とする。」
2項「第1条2項の規定は、債務者が前項の超過部...