LCA(ライフサイクルアセスメント)について

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    LCA(Life Cycle Assessment)について
    緒言
    近年、地球規模の環境問題が深刻化している。中でも、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、天然資源の枯渇は深刻で、人間社会においても多大な影響を与え始めている1)。これらの環境問題には、問題の引き金となる要因物質(環境負荷物質)が存在する。それは、地球温暖化、オゾン層破壊では、二酸化炭素(CO2)やクロロフルオロカーボン(CFCs)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)であり2)、酸性雨の問題では、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)である3)。これらは、環境負荷物質と呼ばれ、人間社会から排出されている。具体的には、工場

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    LCA(Life Cycle Assessment)について
    緒言
    近年、地球規模の環境問題が深刻化している。中でも、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、天然資源の枯渇は深刻で、人間社会においても多大な影響を与え始めている1)。これらの環境問題には、問題の引き金となる要因物質(環境負荷物質)が存在する。それは、地球温暖化、オゾン層破壊では、二酸化炭素(CO2)やクロロフルオロカーボン(CFCs)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)であり2)、酸性雨の問題では、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)である3)。これらは、環境負荷物質と呼ばれ、人間社会から排出されている。具体的には、工場やプラント、自動車、そしてエアコン等からである。天然資源の枯渇に関しては、最近の発展途上国の目覚しい急成長による資源の過剰消費が主な原因となっている。
    これらの環境問題に対して、各国又は、世界全体による対策と取組の必要性が更に増している。
    -日本の環境負荷物質排出量と推移-
    対策と取組を行う前に、まず自国が排出する環境負荷物質の現状を知るべきである。ここで、日本における環境負荷物質の排出量の推移をそれぞれ図に示す。まず、図1.の温室効果ガスに関しては、1990年の約11億トンから2005年で約12億トンとなり、約1億トン増加している。また、これらの温室効果ガスの中で、特に、増加の著しいものは、二酸化炭素(CO2)であり、これは、地球温暖化に対して最も影響を与えている物質と考えられている。二酸化炭素は、2004年現在、世界全体で約265億トン排出されており、その中でも、日本は4.8%を占め、世界で第4位の排出量となっている(図2参照)。図3に示す日本における分野別での排出量を見ると、産業、業務その他、運輸部門で過半数を占めている。その中でも、運輸、業務その他部門の排出量増加が目立っており、日本ではこれらの部門と家庭による排出が多い。
    図1. 日本における温室効果ガスの排出量推移
    図2. 世界の二酸化炭素(CO2)排出量(2004年)
    図3. 日本の分野別二酸化炭素排出量の推移
    次に、酸性雨に影響を及ぼすSOxとNOxの排出量について述べる。図4は、1990年と2002年のSOx、NOx排出量推移である4)。SOxに関しては、この間で約1000万トンから約800万トンとなり、大体200万トン削減しているが、一方でNOに関しては、約2000万トンでほぼ横ばいとなっている。発生源別では、移動による発生源でSOxが大幅に削減されており、自動車産業による環境負荷物質削減への努力が伺える結果となっている。
    図4. 日本の分野別大気汚染物質排出量の推移
    最後に、固形廃棄物について述べる。図5に示した日本の1994年と2000年の固形廃棄物排出量によると、約5億トンから約4.5億トンと5000万トンほど減少しており、その中でも産業廃棄物の減少が大きい。
    図5. 日本の分野別固形廃棄物排出量推移
    -日本の環境問題への対策と取組-
    前節で述べた環境負荷物質の排出を抑制する為に行なわれている対策と取組を述べる。まず、国際的な取組として挙げられるのは、地球温暖化ガス排出の抑制を目的とした京都議定書、オゾン層破壊物質排出の抑制を目的としたモントリオール議定書、そして、有害廃棄物の管理と抑制を目的としたバーゼル条約・ストックホルム条約等がある5)。
    これらの国際的な取組みで規制された条件を満たすべく、日本国内でも、国家レベルから企業、各個人に至るまで、幅広い取組と対策がなされている。国家レベルでは、環境基本法が1993年に11月に成立して以来、様々な環境汚染に対する法案が制定され、2000年には、廃棄物・リサイクル対策である循環型社会形成推進基本法が制定された6)。また、環境負荷物質排出の大半を占める産業界では、各企業がそれぞれ独自の環境対策を採っており、各々毎年環境レポートとして公開している。この環境レポートに活用されているのがLCA法であり、これを用いることによって製品に関わる環境負荷物質の排出量や、環境への総合的評価を行う事ができる。LCA法は企業だけでなく、様々な分野での活用が期待されている環境影響評価法の1つである7)。
    次の章で、このLCAについて詳しく述べていくことにする。
    LCA(Life Cycle Assessment)について
    -LCAの起源について-
    まずLCAとは、Life Cycle Assessmentの略で、環境影響を定量化して計る評価手法の一つである。この手法は、環境への負荷の少ない生産へ移行することを促進するための製品・技術の評価手法として着目を浴びている。
     ここで、LCAの起源について、少しふれておく。
     LCAは、1980年代、コカコーラ社によるリターナブルビンとペットボトルの環境およびコスト評価が起源とされている。それから、米国・欧州のSETAC(Society of Environmental Toxicology and Chemistry)の設立と共に本格的に研究されるようになった。
     そして、1997年には、LCA法の国際的な重要性が増し、ISO/TC207(環境管理)において国際的標準化作業が行われ、ISO14040として発行されて、今日に至っている8)。 
    -LCAの概要と目的-
    LCAは、主に工業製品を主として、製品のライフサイクル(その製品・廃棄に至るまで)に関わる環境負荷物質を一貫して計量し、これを環境への影響カテゴリーに分類して評価する手法である9)(図6参照)。
    この手法は、前節で述べたように、製品だけでなく、様々な事例やケースに応用できることが大きな特徴である。よって、目的も夫々の活用法で変わってくる。大まかに①企業、②行政、③消費者による活用が盛んに行なわれており、
    企業
    製品または生産プロセスの改善を行い、結果として環境負荷の少ない社会生活の実現を目指すこと
    行政
    技術システムや対象の優先付けを行う際、環境側面を重視し、政策等を講じることで、環境負荷の少ない社会生活の実現を目指すこと
    消費者
    製品やシステムのLCA評価を見て、環境面を重視した商品の選択化を促進させことにより、環境負荷の少ない社会生活の実現を目指すこと
     LCAの活用は、最近始まったばかりであり、これらの目的を果たすのに、多くの課題が残されているのも事実である。
    図6. LCAの概念図
    -LCAのISOでの位置付けと構成-
     ここで、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略で国際的標準規格を規定する民間の非営利団体である10)。今では当たり前のように取得される規格であり、特に品質関係の9000シリーズと環境シリーズの14000シリーズは、企業の価値を決める重要な指標として多くの企業で取得されており、今では、企業だけでなく大学や自治体の取得も出始めている。
     このISOの中で、LCAは前節で述べたように、環境関係の国際標準規格である14000シリーズの中に含まれるISO14040として位置付けされている11)。また、この中でLCAの構成は、1)目的・調査範囲の設定、2)インベントリ分析(LCI)、3)環境評価、の3つの項目と、これらを相互に解釈する項目とで構成されている(図7参照)。以下に、各項目を簡単に述べる。
    図7. ISOでのLCAの位置づけとその構成の概略図
    目的・調査範囲の設定
      なにを目的にLCAを用いるのかを明確にし、そしてそれに伴った調査範囲を明確に設定する。
    ここで目的と調査範囲の設定を怠ると後の影響評価の精度に影響する重要な項目である。
    インベントリ分析(LCI)
    対象とする製品ライフサイクル内で発生する環境負荷物質を計量し、データとして棚卸しする。
    データには、バックグラウンドデータ(対象とする製品に間接的に関与するもの)とフォアグランドデータ(対象とする製品に直接関係するもの)がある。フォアグラウンドデータは、LCAの実施者が収集可能なデータであるのに対し、バックグラウンドデータは、実施者では直接収集することが困難で、素材の製造データの文献を基にすることが多い。ここで用いられる文献データも、影響評価の制度に大きく関わる為に、文献の出典や用いた根拠を提示することが重要である。
    影響評価
    インベント分析の結果を使って、環境影響の重要性を評価し、一般的に、次の3つの部分から成る●。Ⅰ. 分類化(Classification)、Ⅱ. 特性化(Characterisation)、Ⅲ. 総合評価(Weighting)。
     
    Ⅰ. 分類化(Classification)
    クラシフィケーションでは、資源消費や排出物を予想される環境影響の種類に基づいた影響カテゴリー(インパクトカテゴリー)に振り分ける。表1に代表的なインパクトカテゴリーを示す。
    表1. 主なインパクトカテゴリーと特性化係数
    Ⅱ. 特性化(Characterisation)
    キャラクタリゼーションでは、排出物が指定された影響カテゴリーに対して果たす役割を相対的に評価し、影響カテゴリー内の役割を数値化して総計する。その際、表1に示してある特性化係数を用いる。要するに、カテゴリー内での影響の定量化を行うことである。
    Ⅲ. 総合評価(Weighting)
     ここでは、特性化したインパクトカテゴリーを、さらに総合化係数を用いて、重み付けし、1つの指標として総合化する。総合化の手法は、いくつか存在するが、主観的な...

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