コンピュータやその他のディジタル電子機器を起動させるマイクロプロセッサのシステムには同期式と非同期式があるが、現在は全て同期式に依っている。
同期式とは、クロックと呼ばれる特別な方形波信号に同期して動作を進めることである。…非同期式では、前述したようにクロックを使わず、その動作は因果律に基づく。あるレジスタでデータ書き込みが完了したら、転送元レジスタへデータ転送を要求する信号を発し、次のデータが転送されるというわけで、他のレジスタ間の転送状況に独立して、動作を進めることができる。
非同期式では、前述したようにクロックを使わず、その動作は因果律に基づく。あるレジスタでデータ書き込みが完了したら、転送元レジスタへデータ転送を要求する信号を発し、次のデータが転送されるというわけで、他のレジスタ間の転送状況に独立して、動作を進めることができる。よって、処理速度は、クロックを用いた場合のようにレジスタ間データ転送時間の最大値ではなく、平均値によって決定する。すなわち、性能の低下因子である最大遅延の影響を受けず、局所計算の平均遅延だけで処理速度が決まるというわけで、信号伝達の平均距離を最小化すれば、今後の、素子微細化によるゲート速度の向上の恩恵をそのまま享受できることになる。同期式より勝る点はほかにもある。
Ⅰ、講義内容の要約
コンピュータやその他のディジタル電子機器を起動させるマイクロプロセッサのシステムには同期式と非同期式があるが、現在は全て同期式に依っている。今日までのコンピュータ性能の飛躍的な向上は、VLSI技術の進歩に支えられてきたと言え、今後も素子の微細化とチップの高集積化が進展するのは間違いないであろう。しかし、こういった素子製造技術が進歩しているにも関わらず、現在のコンピュータを動かしている同期式システムに、プロセッサ性能の限界が見え始めている。そこで、同期式システムに相対する非同期式システムがこの限界を打破するのではないかと脚光を浴びており、その研究が東大先端研究所でさかんに行われている。
同期式・非同期式とはそれぞれいかなるものなのかを明言しておく必要がある。まず、同期式とは、クロックと呼ばれる特別な方形波信号に同期して動作を進めることである。このクロックはチップ全体に分配され、システム全体が共通クロックに合わせて、データの転送・レジスタ書き込みを行うのである。プロセッサ内における任意の2つのレジスタ間データ転送時間はまちまちであるが、全システムが共通クロックによっ...