『暴走する世界-グローバリゼーションは何をどう変えるか

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    第6回 アンソニー・ギデンズ( Anthony Giddens )1938-
    Runaway W orld : How Globalisation is Reshaping Our Lives 1999
    『暴走する世界-グローバリゼーションは何をどう変えるか』佐和隆光訳、ダイヤモンド社、2001
    「社会科学の名著を読むⅠ」三重大学人文学部 2003 年度特殊講義B 櫻谷勝美
    Anthony Gi ddens :LSE(ロンドン政治経済学院)学長 社会学 者 イギリ スのブレア政権が標榜する
    「第三の道」の理論的主導者、その他の著書(邦訳のあるもの)『第三の道』(日本経済新聞社)、『社会
    理論と現代社会学』(青木書店)、『国民国家と暴力』(而立書房)、『社会学』(而立書房)
    第1章 「グ ローバリゼーション」の本質
    第2章 多様 化する「リスク」
    第3章 「伝 統」をめぐる戦い
    第4章 変容 をせまられる「家族」
    第5章 「民 主主義」の限界
    第1章 「グローバリゼーション」の本質
    1 今日、世界中の経済界のリーダーのだれもがグローバリゼーションに言及するし、政治家がこの言葉
    を抜きに演説を終わると舌足らずになる。合理的に先を見通そうとするならグローバリゼーションを
    無視して済ませるわけにはいかない
    2 グローバル化した経済はそれ以前の経済と全く違うモノではなく、過去からの積み重ね、グローバリ
    ゼーションを真っ向から否定する懐疑論者の言説は「現実離れした戯言」
    3 懐疑論者はグローバリゼーションという世界観は、福祉国家の解体と財政支出の削減を企図
    する市場主義者のイデオロギーと言う。それに対してグローバリゼーションを認めるラディ
    カルズは、国家の統治権のおよぶ範囲は狭まり、政治家の影響力は低下したと見る
    4 著者は、ラディカルズを支持する。ただし、両方ともグローバリゼーションの経済的側面し
    か見ておらず、理解不十分である。政治、技術、文化にもグローバリゼーションの波は及ん
    でいる。その根源は、1960 年代後半以降の通信技術システムの進歩の結果である
    アメリカで 5000 万人がラジオを聴くようになるのに 40 年かかったが、インターネットを利
    用するアメリカ人が 5000 万人になるのに 4 年しかかからなかった。
    ネルソン・マンデラはテレビ映像のおかげでグローバルな有名人になった
    5 グローバリゼーションは国際金融のような個人の手に負えない現象に限らず、男女同権や伝
    統的な家族のありよう、労働から政治におよぶ幅広い領域の変化と関係している
    6 グローバリゼーションは国家が持つ経済をコントロールする力の一部を国家から奪い取る上
    方統合の力と、ローカルな文化的アイデンティティを復興する下方分散(=自立分散化)の
    力を持っている。(たとえば、イギリスから分離を望むスコットランドやカナダのケベック州
    は国民国家の統合機能を弱めたグローバリゼーションの産物)
    7 グローバリゼーションの横断的展開
    1
    一国内or国境を越えた経済的文化的ゾーン(たとえば、香港、北イタリア、シリコンバレ
    ー、スペイン北部のバルセロナ)
    8 共産主義の崩壊は、グローバリゼーションをキーに説明することができる
    「テレビジョン革命」 → 人々は他国の反体制デモをテレビで見て自国の反体制デモに参加し

    9 懐疑論者は「グローバリゼーションは文化の多様性を侵食し、国家間の不平等を押し広げ、
    貧困化を押し進める。グローバリゼーションは、優勝

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    資料の原本内容

    第6回 アンソニー・ギデンズ( Anthony Giddens )1938-
    Runaway W orld : How Globalisation is Reshaping Our Lives 1999
    『暴走する世界-グローバリゼーションは何をどう変えるか』佐和隆光訳、ダイヤモンド社、2001
    「社会科学の名著を読むⅠ」三重大学人文学部 2003 年度特殊講義B 櫻谷勝美
    Anthony Gi ddens :LSE(ロンドン政治経済学院)学長 社会学 者 イギリ スのブレア政権が標榜する
    「第三の道」の理論的主導者、その他の著書(邦訳のあるもの)『第三の道』(日本経済新聞社)、『社会
    理論と現代社会学』(青木書店)、『国民国家と暴力』(而立書房)、『社会学』(而立書房)
    第1章 「グ ローバリゼーション」の本質
    第2章 多様 化する「リスク」
    第3章 「伝 統」をめぐる戦い
    第4章 変容 をせまられる「家族」
    第5章 「民 主主義」の限界
    第1章 「グローバリゼーション」の本質
    1 今日、世界中の経済界のリーダーのだれもがグローバリゼーションに言及するし、政治家がこの言葉
    を抜きに演説を終わると舌足らずになる。合理的に先を見通そうとするならグローバリゼーションを
    無視して済ませるわけにはいかない
    2 グローバル化した経済はそれ以前の経済と全く違うモノではなく、過去からの積み重ね、グローバリ
    ゼーションを真っ向から否定する懐疑論者の言説は「現実離れした戯言」
    3 懐疑論者はグローバリゼーションという世界観は、福祉国家の解体と財政支出の削減を企図
    する市場主義者のイデオロギーと言う。それに対してグローバリゼーションを認めるラディ
    カルズは、国家の統治権のおよぶ範囲は狭まり、政治家の影響力は低下したと見る
    4 著者は、ラディカルズを支持する。ただし、両方ともグローバリゼーションの経済的側面し
    か見ておらず、理解不十分である。政治、技術、文化にもグローバリゼーションの波は及ん
    でいる。その根源は、1960 年代後半以降の通信技術システムの進歩の結果である
    アメリカで 5000 万人がラジオを聴くようになるのに 40 年かかったが、インターネットを利
    用するアメリカ人が 5000 万人になるのに 4 年しかかからなかった。
    ネルソン・マンデラはテレビ映像のおかげでグローバルな有名人になった
    5 グローバリゼーションは国際金融のような個人の手に負えない現象に限らず、男女同権や伝
    統的な家族のありよう、労働から政治におよぶ幅広い領域の変化と関係している
    6 グローバリゼーションは国家が持つ経済をコントロールする力の一部を国家から奪い取る上
    方統合の力と、ローカルな文化的アイデンティティを復興する下方分散(=自立分散化)の
    力を持っている。(たとえば、イギリスから分離を望むスコットランドやカナダのケベック州
    は国民国家の統合機能を弱めたグローバリゼーションの産物)
    7 グローバリゼーションの横断的展開
    1
    一国内or国境を越えた経済的文化的ゾーン(たとえば、香港、北イタリア、シリコンバレ
    ー、スペイン北部のバルセロナ)
    8 共産主義の崩壊は、グローバリゼーションをキーに説明することができる
    「テレビジョン革命」 → 人々は他国の反体制デモをテレビで見て自国の反体制デモに参加し

    9 懐疑論者は「グローバリゼーションは文化の多様性を侵食し、国家間の不平等を押し広げ、
    貧困化を押し進める。グローバリゼーションは、優勝劣敗の世界をつくりだし、そこでは、
    ほんの数人が巨富を手にする一方、大多数の者は、悲嘆と絶望の淵に追いやれられてしまう」
    という。確かに世界全体の所得分配における最貧5分位が占める比率は、89 年から 98 年に
    かけて、2.3%から 1.4%に下がった。だからと言って富める国が悪いというわけではない。
    グローバリゼーションを欧米支配と決めつけるべきではない。
    国家群や大企業群が、グローバリゼーションを思い通りに操れるわけではない。
    10 国の経済政策の有効性は低下した。こうしたことは国家だけでなく家族、仕事、伝統、自然
    についても同じで、ことばは同じでも中身が昔とはことなるものになった。
    11 私たちはグローバル・コスモポリタン社会に住む第一世代である。この社会は、安定した社
    会ではなく、深い亀裂の後を残す不安だらけの社会である。(45p)
    12 この社会はいまのところ、無目的かつ無原則的にできあがる秩序であるが、わたしたちが思
    いどおりにつくりかえることは「できる」というのが筆者の考え。
    日々の生活のありようをグローバリゼーションに適用させなければならない
    第2章 多様化する「リスク」
    13 リスクという言葉は、ポルトガル語の「あえておこなう」という意味である(訳者注、イタ
    リア語の「勇気をもっておこなう」であるという説もある)
    14 リスクとは、将来の可能性を積極的に評価したうえで、あえて冒す危険を意味する。伝統文
    化はリスクという概念をもたなかったが、今の時代はその概念が重要性を持っている。
    15 近代産業文明やリスクという言葉は、過去との決別を志向する社会を前提にしている。
    16 リスクには正と負の両面があるが、神や伝統、自然の気まぐれなどに未来をゆだねるのでは
    なく、みずから未来を切り開こうとする社会の原動力こそがリスクである。人生をおもしろ
    くするために、リスクへの自発的挑戦はかかせない。
    17 <遺伝子組み換え作物のリスク>
    環境を汚染する化学肥料や農薬を大量に使う集約農業は、持続不可能である
    → 伝統農法にもどるのでは、世界の人口を養っていけない
    → 遺伝子組み換え農法が集約農業がはらむ問題点を解きほぐす利点を否定できない
    → 害虫への抵抗力を増すために穀物、野菜、果実などに組み込まれた遺伝子が他の生物に
    入りこんで「スーパー」雑草ができるかもしれないリスク
    2
    18 今が昔より危険なわけではないが、外的な危険とそれ以上の人工リスクにさらされている
    しかし、反科学、反合理主義をとなえても、得るところは乏しい(75p)
    19 リスクに対して消極的であろうとしても無理である。リスクへの挑戦こそが経済を活性化さ
    せ、社会を改革するためには不可欠である
    20 新しいリスクは国境を越えるのだから、適切なリスク管理のためには国際協力は欠かせない
    第3章 「伝統」をめぐる戦い
    21 スコットランド人の男はキルト(民族衣装)をまとい、、、バグパイプを奏でるなか、おごそ
    かな式典は進められる。じつは、民族衣装と楽器の歴史は、それほど古くなく、イングラン
    ドの産業資本家トーマス・ローリントンが、18世紀初頭に考案したものである。キルトの
    生みの親は産業革命である。
    22 伝統は不変であるというのは神話である。伝統を保守することこそが、保守主義者の心髄で
    ある
    23 先進国で伝統が不滅であったのは、近代化がほどこされたのは公的組織と経済に限ってのこ
    とであり、家族、性、男女差別などに伝統と慣習(=伝統の通俗版)が深くしみこんでいる
    (90)
    24 今日、グローバリゼーションのあおりを受けて、欧米諸国では日常生活までが伝統のしがら
    みから抜け出しつつある
    25 伝統が重きをなしておれば共同体の中での個人の社会的地位は安定していた。個人は意思決
    定をしなくてよい
    26 ひとたび伝統が撤退してしまうと、私たちの人生は、選択肢の多い、したがって熟慮が欠か
    せないものとなる。伝統と慣習に縛られなくなると日々の生活に個人の意思決定が求められ
    るようになる。自我の確立が避けて通れなくなる(99)。
    27 意思決定のどこが問題かというと、中毒と強制がつきまとう点である
    28 アルコールや麻薬だけでなく、仕事、運動、食事、セックス、そして愛情にさえ人は中毒し
    かねない。人が中毒におちいるのは、自主的であるはずの選択が、不安ゆえに硬直化してし
    まうからである。中毒は自主性の凍結である。
    29 中毒と自主性のせめぎ合いは、グローバリゼーションの一方の座標軸であり、もう一つの
    座標軸は、コスモポリタニズムとファンダメンタリズムを両極に据えている。ファンダメン
    タリズムは聖書が説く教義を、社会、経済、政治に適用しようとする。
    30 伝統は、意味の多様性、アイデンティティの多様性を許容しない、自由な意見交換を許さな
    い。あらゆる伝統はファンダメンタリズムを芽吹かせる可能性をもっている
    3
    31 ファンダメンタリズムは宗教的、エスニック的、国家主義的、政治的形式をとるが、暴力と
    紙一重である。
    32 ファンダメンタリズムは、聖なるものが存在しない世界に私たちは住むことができるかと問

    33 その通りであり、住むことはできない。万人が認める普遍的な価値の存在が必要である。
    34 コスモポリタン主義者(著者自身を含む)は道徳律(モラルコミットメント)をだれよりも
    渇望している。命がけで手に入れたいものがなければ、私たちは生きがいを見いだせない。
    第4章 変容をせまられる「家族」
    35 現在、世界で進行中のすべての変化のなかで私生活-性、人間関係、結婚、家族など-にか
    かわる変化はもっとも重要な変化である(108)
    36 私生活にかかわる変化も正と負の両面がいりまじっている
    37 保守派の政治家や活動家は、家族の崩壊をいいつのり、伝統的家族への回帰をくりかえしよ
    びかけ...

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