不公正な取引方法 不当廉売(一般指定6項)
公取委 昭和57年5月28日勧告審決
マルエツ=ハローマート事件
1 事実の概要
マルエツ、ハローマート事件が、小売業における不当廉売について唯一法的措置の取られた事件である。量販店ハローマートの松戸市本郷地区にある「ハローエース上本郷店」(※1)は牛乳専売店の店頭販売価格が1本あたり190円から210円程度であるなかで、新装開店に伴い廉売すれば集客効果のある牛乳について従来の通常販売価格が178円であった1リットル紙容器入りの牛乳を160円に値下げした。一方、近隣の量販店マルエツの上本郷店(※2)は、ハローエース上本郷店の牛乳の価格引下げに対抗して、従来の通常販売価格が178円であった牛乳を1本当たり156円で廉売し始めた。
その後、両店は、牛乳の廉売による集客効果を狙い、その販売利益を度外視し交互に対抗的に販売価格の引下げを繰り返した。その結果、継続して(約3ヵ月間)、顧客一人につき1本目は100円、2本目から150円の価格で販売本数の制限なしに牛乳を販売するに至った。
なお、この当時のマルエツ上本郷店の仕入れ価格は1本当たり155円と158円であった。ハローエース上本郷店の仕入れ価格は1本あたり157円と160円であった。また、同地区(※3)における牛乳専売店での牛乳仕入れ価格は1本当たり185円程度であった。
この事件で公正取引委員会は、多種類の商品を取り扱っている有力な小売業者が牛乳をその仕入れ価格を著しく下回る価格で継続して販売することは、牛乳専売店等を競争上きわめて不利な状況におくもので、その事業活動を困難にするおそれがあり、不当廉売に該当するとした。
(※1)ハローマートは千葉県松戸市に本店を置くスーパーマーケットで、松戸市内に4店舗を有し、同市における有力な食品小売業者である。
(※2)マルエツは東京都に本店を置くスーパーマーケットで1都3県に145店舗を有する首都圏で有力な事業者である。
(※3)両事業者は上本郷において近接して店舗を有し、また同店舗から1キロ以内の商圏には牛乳専売店が10数軒存在し、他にも食料品小売店が存在していたが、廉売期間中の牛乳の販売数量、宅配件数、牛乳の売り上げ等は前年同期に比例していずれも減少していた。
不当廉売について
不当廉売とは「正当な理由がないのに商品または役務を、その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」(一般指定6項)である。
2 審決要旨
公正取引委員会は、マルエツおよびハローマートのような多種類の商品を取り扱っている有力な小売業者がこのような廉売を行うことは、商圏内の牛乳専売店等を競争上きわめて不利な状況に置くものであり事業活動を困難にするおそれがあるとして独占禁止法の規定に基づいて審査を開始したところ、マルエツ及びハローマートは昭和56年11月4日及び同月6日からそれぞれ上本郷店における前記廉売行為を中止した。
法令の適用
マルエツ及びハローマートは不当に低い対価をもって、牛乳を供給したものであり、これは、不公正な取引方法の旧一般指定5項(現6項)に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
公正取引委員会の措置
株式会社マルエツ及びハローマートは
同社上本郷店が牛乳をその仕入れ価格を著しく下回る価格で販売していたが、この行為をやめたこと
今後、右行為と同様な行為を行わないこと
を同社上本郷店の商圏内において牛
不公正な取引方法 不当廉売(一般指定6項)
公取委 昭和57年5月28日勧告審決
マルエツ=ハローマート事件
1 事実の概要
マルエツ、ハローマート事件が、小売業における不当廉売について唯一法的措置の取られた事件である。量販店ハローマートの松戸市本郷地区にある「ハローエース上本郷店」(※1)は牛乳専売店の店頭販売価格が1本あたり190円から210円程度であるなかで、新装開店に伴い廉売すれば集客効果のある牛乳について従来の通常販売価格が178円であった1リットル紙容器入りの牛乳を160円に値下げした。一方、近隣の量販店マルエツの上本郷店(※2)は、ハローエース上本郷店の牛乳の価格引下げに対抗して、従来の通常販売価格が178円であった牛乳を1本当たり156円で廉売し始めた。
その後、両店は、牛乳の廉売による集客効果を狙い、その販売利益を度外視し交互に対抗的に販売価格の引下げを繰り返した。その結果、継続して(約3ヵ月間)、顧客一人につき1本目は100円、2本目から150円の価格で販売本数の制限なしに牛乳を販売するに至った。
なお、この当時のマルエツ上本郷店の仕入れ価格は1本当たり155円...