立法不作為に対する司法審査
憲法81条は裁判所が違憲審査権を持つことを認めている。この違憲審査権は通常、すでに成立している法律に対して及ぶものであるが、それでは立法されていないものについては、いかなる不合理であれ 裁判 で何も争えなくなってしまう。そこで、立法の不作為が実体法上違憲となりうるか、なるとして違憲審査の対象となりうるか、なりうるとして、どのような方法なら可能かが問題となる。
まず、立法不作為は実体法上違憲となりうるかが問題となる。
立法は国会の裁量事項であるため、立法の不作為は違憲とはならないとの考えもある。しかし、そのような国会の立法裁量も法の支配のもとでは憲法により拘束される。したがって、憲法の明文上一定の立法をなすべきことが規定され、または憲法解釈上そのような結論が導かれる場合には、国会は立法義務を負い、国家の立法不作為も違憲なりうるだろう。
もっとも、立法をなすうえでは立法内容の検討・審議のため一定の時間が必要であり、また立法されないことに相当の理由が存在することも少なくないので、そこで、立法の不作為を認めるためには①国会が正当な理由なく、②相当の合理的期間を経...