ラファイエット夫人の代表作である『クレーヴの奥方』のクレーヴ殿、クレーヴ夫人、ヌムール公と『タンド伯爵夫人』のタンド伯爵、タンド夫人、シュヴァリエのそれぞれの関係を比較すると、3つの相違点が出てくる。
まず一つはクレーヴ殿は夫人を心から愛していたことに対し、タンド伯爵は夫人を初めは愛することなく、他に愛人を作っていたこと。次に、クレーヴ夫人はクレーヴ殿に敬意を持ってはいたが、最後まで愛することはなかったことに対して、タンド夫人はタンド伯爵を最初は愛していたということだ。そして最後になるが、クレーヴ夫人は最後までヌムール公に自分の気持ちさえも打ち明けず、関係を持たなかったが、タンド夫人はシュヴァリエと関係を持ったことだ。
愛されることと愛することの駆け引きはいつの時代も変わらない。重んじている相手に愛されれば本当に愛せるかどうかは別だが、同じように相手を愛したいと思う。愛せなくても、クレーヴ夫人のように相手に敬意を持つことはできるだろう。しかし、相手に愛されていない場合、クレーヴ殿のように一人を愛し続けることは容易ではない。多くの人は愛することで見返りを求めてしまうからだ。夫を愛せなけれ...