「インターネット市民塾」平成13年度 第2回研究会
「インターネット市民塾」平成13年度 第2回研究会
日時:平成13年8月31日(金)13:00〜16:30
場所:国立教育政策研究所 南館大会議室
講演
「地域文化と学校教育をむすぶ情報編集プラットフォーム」
編集工学研究所 太田剛氏( go@eel.co.jp )
パソコンとインターネット
パソコンはもともとパーソナルコンピュータという名の通り「個人の知」をあつかう道具でした。ところがインターネットが急速に普及し、教科書に載っているような知すなわち「世界知」がパソコンの世界にどんどん入ってきました。この「世界知」と「個人知」をつなげるのが編集工学であり、あまたあるいろいろな情報を自分で使いたいように加工して使える形にする「関係の発見と方法の冒険」というのが、会社の中心の柱になっています。古来は「世界知」と「個人知」の間には「共同知」があり、それが二つを結びつけていたはずではなかったでしょうか。コミュニティ、いわゆる村が出来上がり「聖=日知り」といわれる生きたデータベースがいて、種まきの時期から、村の慣習、祭りの作法など全部データベース化されて物語として語っていました。この「共同知」が今のITの技術によって、もう一回作り直せるのではないかという捉え方をしています。学校教育から見た総合学習、情報教育、教科別学習、地域情報から見ると、地域文化、生涯学習、観光情報、産業経済、いろいろな政策、このような情報を「共同知」として一緒に、相互交流・相互編集させて扱えるようなプラットフォームが作れるのではないかと思っています。
システムの例
?クロノスシステム(学校教育のベースとなるシステム)
学校にITが導入される位置付けは総合学習、情報教育などいろいろありますが、システムだけ入れても結局は使われません。そこで編集的な学習カリキュラムの開発を重視し、それをベースとした形でシステム開発を行っています。このクロノスシステムは、情報処理振興事業協会(IPA)の支援事業の1つとして、編集工学研究所が編集した『情報の歴史』(NTT出版)をベースに、慶應義塾大学との共同で開発されました。5万件の歴史事象に関するデータを共有データとして、東洋史・西洋史を横断する5本の柱に編集し、6本目にローカルデータとしてユーザが自分で調べた年表を入力することができます。学校の歴史の授業では東洋史と世界史がバラバラに教えられ、例えば、信長とエリザベス女王が同時代の人ということなど知らない人が多いですが、そういうことが直感的に分かるようなインターフェースの設計になっています。たとえば医学史と美術史をレオナルド・ダ・ビンチを媒介にしてつなげるなど、共有データとローカルデータを結びつけながら、新しい歴史の関係を発見していこうというコンセプトです。
このシステムのメインのインターフェースがクロノマトリックスという立体空間になります。まず、膨大なデータの中からあるテーマで切り出した情報群に名前を付けてストックしておくことが出来ます。これをCo-Set(コセット)と読んでいます。例えば、今、実際に高校で使っているCo-Setの1つ、ルネサンスのデータを表示してみます。3D空間の奥行きが時間軸になっていて、マウスの操作で前へ前へ押していくと、どんどん歴史事象をあらわす立方体が空間の中に近づいてくるというように、時間軸に沿ってツーリングできるようになっています。この3D空間を分割することも出来るので、例えば半分に分けて、上は今のルネサンスを表示した
「インターネット市民塾」平成13年度 第2回研究会
「インターネット市民塾」平成13年度 第2回研究会
日時:平成13年8月31日(金)13:00〜16:30
場所:国立教育政策研究所 南館大会議室
講演
「地域文化と学校教育をむすぶ情報編集プラットフォーム」
編集工学研究所 太田剛氏( go@eel.co.jp )
パソコンとインターネット
パソコンはもともとパーソナルコンピュータという名の通り「個人の知」をあつかう道具でした。ところがインターネットが急速に普及し、教科書に載っているような知すなわち「世界知」がパソコンの世界にどんどん入ってきました。この「世界知」と「個人知」をつなげるのが編集工学であり、あまたあるいろいろな情報を自分で使いたいように加工して使える形にする「関係の発見と方法の冒険」というのが、会社の中心の柱になっています。古来は「世界知」と「個人知」の間には「共同知」があり、それが二つを結びつけていたはずではなかったでしょうか。コミュニティ、いわゆる村が出来上がり「聖=日知り」といわれる生きたデータベースがいて、種まきの時期から、村の慣習、祭りの作法など全部データベース化されて物語として語っていました。この「共同知」が今のITの技術によって、もう一回作り直せるのではないかという捉え方をしています。学校教育から見た総合学習、情報教育、教科別学習、地域情報から見ると、地域文化、生涯学習、観光情報、産業経済、いろいろな政策、このような情報を「共同知」として一緒に、相互交流・相互編集させて扱えるようなプラットフォームが作れるのではないかと思っています。
システムの例
?クロノスシステム(学校教育のベースとなるシステム)
学校にITが導入される位置付けは総合学習、情報教育などいろいろありますが、システムだけ入れても結局は使われません。そこで編集的な学習カリキュラムの開発を重視し、それをベースとした形でシステム開発を行っています。このクロノスシステムは、情報処理振興事業協会(IPA)の支援事業の1つとして、編集工学研究所が編集した『情報の歴史』(NTT出版)をベースに、慶應義塾大学との共同で開発されました。5万件の歴史事象に関するデータを共有データとして、東洋史・西洋史を横断する5本の柱に編集し、6本目にローカルデータとしてユーザが自分で調べた年表を入力することができます。学校の歴史の授業では東洋史と世界史がバラバラに教えられ、例えば、信長とエリザベス女王が同時代の人ということなど知らない人が多いですが、そういうことが直感的に分かるようなインターフェースの設計になっています。たとえば医学史と美術史をレオナルド・ダ・ビンチを媒介にしてつなげるなど、共有データとローカルデータを結びつけながら、新しい歴史の関係を発見していこうというコンセプトです。
このシステムのメインのインターフェースがクロノマトリックスという立体空間になります。まず、膨大なデータの中からあるテーマで切り出した情報群に名前を付けてストックしておくことが出来ます。これをCo-Set(コセット)と読んでいます。例えば、今、実際に高校で使っているCo-Setの1つ、ルネサンスのデータを表示してみます。3D空間の奥行きが時間軸になっていて、マウスの操作で前へ前へ押していくと、どんどん歴史事象をあらわす立方体が空間の中に近づいてくるというように、時間軸に沿ってツーリングできるようになっています。この3D空間を分割することも出来るので、例えば半分に分けて、上は今のルネサンスを表示したまま、下は教科書からピックアップした、日本の戦国時代のアイテムを表示して見ます。そうすると日本は雪舟の時代に、レオナルド・ダ・ビンチが活躍している、あるいは、種子島に鉄砲伝来の頃にミケランジェロが何をやっていたかという関係が見えてきます。この歴史事象をあらわす立方体は、それぞれの関係を線で結ぶことができ、その関係に名前をつけることもできます。継承だとか侵略、譲与、協定、先駆者・後継者などの関係線をたどり、関係自体をいくつか重ね合わせながら今まで発見できなかった歴史のつながりを視覚的に発見させることができます。
実際にこのシステムを使っている慶応幼稚舎(小学校)の2年生では、まだ歴史の授業がはじまっていない状態で、年表や歴史的にものを見る方法も知らないわですが、実際に実験事業をしてみると、夢中になるわけですね。「アルコールの発見」、「トウモロコシができた」など分かりやすいものをあらかじめピックアップしてあげてますが、歴史軸に沿ってものを見るということにとても興奮しています。カタカナは読めるので「コロンブス」「レオナルド・ダ・ビンチ」などを発見しながら、半分は遊んでいるようですが、漠然と歴史の流れは身についているようです。先生にお話を聞くと「40分の授業でこれだけ全員がずっと一つのことに集中しているのは初めてだ」と、とてもびっくりされていまました。
慶應幼稚舎4年生の授業では、4年生になるともう少し高度なことが出来るので、4人一組ぐらいでこのシステムを使い、先ほどのように上半分に、彼らがよく知っている「福沢諭吉」の歴史を出し、下半分には全然知らない例えば「ジョン万次郎」の生涯を表示します。これで福沢諭吉の歴史をベースに、よく知らないジョン万次郎がどういう人だったのかを理解していきます。この後、さらに世界の大まかな歴史を重ね合わせます。すると、福沢諭吉やジョン万次郎の時代の日本と世界の歴史が立体的に重なってくるわけです。この状態で、いくつかの課題を与え、システムで発見したことをチェックしながら、自分達でまとめていくわけですね。
続きは情報提供先をご参考ください。
情報提供先 -> http://www5a.biglobe.ne.jp/~spgas/oaa/kei/k1.htm