「年金における社会保険方式と社会扶助方式について」
1.序論
近年、急速な勢いで進行している少子高齢化がさまざまな問題を引き起こしていることは周知の事実である。それに拍車をかけるように国民の所得も二極化が進んでおり、特に低所得者の間で老後の安心できる人生を約束してくれるはずだった年金制度に不安を覚える人たちが増えてきた。それもそのはず、制度の3分の1を支えている一般財源は、37%を公債に頼っているという異常な状況下にある。二十歳を過ぎて、「年金」を具体的な問題として捉えられるようになった今、その仕組みを理解し、熟考してみる必要があると思われる。
2.本論
Ⅰ.社会保険制度と社会保障制度
1883年、ドイツのビスマルクが世界で初めて作った社会保障制度は、保険料を労働者だけでなく、雇用主や国も負担する社会保険方式であった。この社会保険制度は現在我が国の年金制度で採用されているが、日本以外にこれを採用している国はイギリスとオランダのみである。その他の国は国庫予算を社会保障の財源とする社会扶助方式を採っている。どちらにもメリットとデメリットがあるのだが、どちらを採用するかはその国の国民性なども含め、様々な観点から検討されなければならない。
最近、日本も年金の仕組みを社会扶助方式に転換すべきだという意見があるようだが、私は、現状の社会保険方式を改良しながら維持していくべきだと考えている。社会保険制度を批判する人々は大きく分けて3つのデメリットを挙げているが、いずれも解決可能であると考えられるし、社会扶助方式へ転換するリスクと比較すれば遥かにメリットが多いように思われる。
Ⅱ.滞納・未納問題
まず第一に、保険料の滞納・未納問題が挙げられている。年金制度は、財源の3分の2を加入者から支払われる保険料に頼っている。しかし、国民年金保険料の収納率は2003年度(平成15年度)末で63.4%にとどまっており、制度自体の存続が危ぶまれているという状況である。年金未納の主な理由には、①低所得であるために保険料を支払う余裕がない②制度の複雑さゆえの手続きのし忘れ③社会保険庁の不祥事による年金制度への不信感などが挙げられる。それ以外にも、十分な所得がありながら、民間の保険に加入しているため、払わない人もいる。
なぜこのように不安定な状況に陥ってしまったのだろうか。昭和36年に国民年金がスタートした時は、保険料はなんと月額100円(35歳未満)で、40年間納付すると月額3500円の年金を65歳から受けられる仕組みであった。普通に考えて、今の時代節約しても老人一人がひと月に3500円で暮らすのは無理がある。そのために国民年金は時代に合わせてその仕組みを変えて、今のような複雑な構造を備えた分かりにくい姿に至ったのである。そして今、「未来」への投資であるはずの年金が、低所得者の「現在」を圧迫している。
年金制度への不信感が生まれた原因の一つには、将来の年金受給への不安があり、その背景には年金の運用損失があると考えられる。厚生労働省は、厚生年金会館などの年金福祉施設について、6年以内にすべてを廃止または売却する方針を固めた。全国にある265の年金福祉施設には、これまで約1兆5000億円の年金保険料が充てられており、これらの施設のうち97%が赤字である。しかし、この問題は、年金を運用する者だけの責任ではないはずだ。現在、日本国内の資産デフレは深刻であり、年金制度そのものに問題があるというよりも、なんら効果的な経済対策が立てられていない状況が問題だ。現在のままでは、個人責任による年金に
「年金における社会保険方式と社会扶助方式について」
1.序論
近年、急速な勢いで進行している少子高齢化がさまざまな問題を引き起こしていることは周知の事実である。それに拍車をかけるように国民の所得も二極化が進んでおり、特に低所得者の間で老後の安心できる人生を約束してくれるはずだった年金制度に不安を覚える人たちが増えてきた。それもそのはず、制度の3分の1を支えている一般財源は、37%を公債に頼っているという異常な状況下にある。二十歳を過ぎて、「年金」を具体的な問題として捉えられるようになった今、その仕組みを理解し、熟考してみる必要があると思われる。
2.本論
Ⅰ.社会保険制度と社会保障制度
1883年、ドイツのビスマルクが世界で初めて作った社会保障制度は、保険料を労働者だけでなく、雇用主や国も負担する社会保険方式であった。この社会保険制度は現在我が国の年金制度で採用されているが、日本以外にこれを採用している国はイギリスとオランダのみである。その他の国は国庫予算を社会保障の財源とする社会扶助方式を採っている。どちらにもメリットとデメリットがあるのだが、どちらを採用するかはその国の国民性など...