東京福祉大学の教養基礎演習Ⅱのレポートです。
科目名:教養基礎演習Ⅱ
科目コード:1008
参考にしていただければと思います。
環境問題と環境保護のための取り組みについて述べよ。
地球が抱える環境問題として地球温暖化、海洋汚染、水質汚染、大気汚染、森林破壊が挙げられ、五大環境問題と呼ばれている。本レポートでは地球温暖化、海洋汚染、森林破壊の三つに着目する。地球温暖化とは、石油や石炭などの化石燃料の大量消費により、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが増加し、太陽からの熱が宇宙に逃げずに地球の表面にたまることにより起こる地球の平均気温の上昇のことである。環境省によると、世界平均気温は100年で0.74度上昇し、世界平均海面水位は17㎝上昇しており、近年になるほど上昇傾向となっている。
そんな地球温暖化が日本に与える影響として気温の上昇による熱中症の増加や動物の生息域の減少などがある。また世界単位でも南極・北極の氷が融解したことによる海面水位の上昇、蚊が住みやすい環境が増えたことによる蚊を媒介とした感染症の増加などさまざまな影響が出ている。私たちの身近な生活のなかにも最新の地球温暖化の影響として挙げられるものに令和のコメ騒動がある。この令和のコメ騒動にはコメ離れや地震、台風による需要と供給のバランスが崩れたことなども原因としてあるが、2023年の猛暑の影響で大きさが基準に満たない、精米すると割れやすいといったことが背景としてある。
次に海洋汚染とは、人間が排出したさまざまな物質によって海洋環境が汚染されてしまうことである。その主な原因として以下の四つが挙げられる。一つ目は、ごみが正しく処理されずにポイ捨てや不法投棄などによってごみが陸から川に流され、最終的に海にたどり着き海洋ごみになることである。海洋ごみの中でもプラスチックは、自然に分解されるまでに長い時間がかかるためそのプラスチックを生き物が誤って食べたり、プラスチックごみによって傷ついたりする。二つ目は船やタンカーから漏れる油である。油が海に流出してしまうと、海鳥や魚など多くの生き物の命を奪ってしまう事態になり、漏れた油が海流に乗って遠く離れた地域にまで被害をもたらすこともある。
三つ目は、工場排水である。工場などの排水に有害な物質が含まれていると、それらが海に流入して海洋の環境を汚染してしまうことがあり沿岸部だけでなく内陸部の工場などが河川に排水している場合も、結果的に海洋汚染を引き起こすことがある。四つ目は、私たちの暮らしから出る生活排水である。日常生活からの排水は河川や海に流されるので食べ残しや調理に使った油、大量の洗剤などをそのまま排水溝に流すと海洋汚染が進んでしまう。
このような海洋汚染によって化学物質が含まれるマイクロプラスチックを海に住む生物が食べてしまう、プラスチックごみが日光にさらされることによりメタンガスなどの温室効果ガスが発生する、化学物質を含んだ貝や魚を食べた人に健康被害がでるなどの悪影響が考えられる。海洋汚染の現状として海上保安庁が2021年に実施した調査では、海洋汚染の件数が493件と過去10年間でもっとも多くなっており、そのうち332件が船舶などからの油によるもの、139件が家庭ごみの不法投棄などの廃棄物によるものである。
最後に森林破壊とは、火災や干ばつ、人間による伐採などによって、自然の回復力を超えて森林が減少・消失することである。環境省によると、世界の森林面積約40.3億ヘクタールの内、毎年520万ヘクタールが減少している。特に、南アメリカ、アフリカなどの熱帯の森林を中心に、減少面積が大きくなっているが、中国やインド、ベトナムを中心とした温帯林では、森林面積が増加している国も見られ、日本でも大きな森林破壊は生じていない。
森林破壊の主な原因としては、酸性雨による森林の枯死、短い期間で行う焼畑農業などがある。アフリカなど熱帯の地域では、土壌が酸性のため、作物を育てるのが困難である。理論上は、焼畑農業を行った土地は回復するまで数年間放置しておくことにより、持続可能な手法だとされているが、そのようにされていない地域もある。また日本は大きな森林破壊は生じてはいないが、森林資源が年々増加している。言い換えれば木材自給率が低く、輸入木材が多いということであり、森林破壊を助長しているとも言える。
ここまで地球温暖化、海洋汚染、森林破壊の現状、現代社会に与える影響について述べてきたが、国際社会ではさまざまな対策がなされている。地球温暖化を例に挙げると、2015年に取り決められた新たな地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定がある。パリ協定とは、1997年に定められた京都議定書の後継となるものであり、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする、21世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにするという世界共通の長期目標を掲げている。パリ協定は発展途上国を含むすべての主要国が対象であり、フランスでは使い捨てプラスチック製品の廃止、衣料品再利用の義務化などを行っており、国際社会で脱炭素を目指そうとする動きが活発になっている。
こうした国や企業による対策だけでなく、私たち個人も日々での対策が求められている。海洋汚染であれば、マイボトルや紙ストローを使う、大量の洗剤や油などを排水溝にそのまま流さない、森林破壊であれば、書類をデジタル化して紙の使用量を減らす、ボランティアとして森林保全活動に参加するなど日常生活から環境破壊防止を意識することが必要である。
本稿はここまでさまざまな環境問題と環境保護のための取り組みについて述べてきた。地球温暖化の現状としては100年で0.74度の平均気温の上昇、熱中症の増加、海洋汚染は過去10年間で最も多い493件発生しており、森林破壊は毎年520万ヘクタールの森林面積が減少している。このように環境破壊は年々増加しているが、国際社会ではパリ協定採決され、企業も脱炭素に向けて活動している。しかし、国や企業だけでなく私たち個人も環境問題の現状を知り、マイボトルや紙ストローを使うといった日常生活での工夫によって環境を保護することが重要である。
環境省 2019年「おしえて地球温暖化」
https://www.env.go.jp/content/900441920.pdf
海上保安庁 2021年 「令和3年の海洋汚染の現状」https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/r4/k220216/k220216.pdf
環境省 2015年 「世界の森林を守るために」
https://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_2.html#top
林野庁 2021年「森林資源の現状」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/r4/attach/pdf/2-2.pdf
坂上美樹「気候変動から世界をまもる30の方法」合同出版株式会社2021年
池上彰「ニュースに登場する世界の環境問題」
さえら書房 2010年
小安宏幸「地球が危ないプラスチックゴミ」
汐文社 2020年
橋本淳司「水と環境問題」文研出版2010年
東京アカデミー『セサミノート②一般教養』2023年 七賢出版