|
東京福祉大学 基礎演習Ⅰ 科目終了試験 1.心理学の研究領域と研究法について 2.対人認知における印象形成について 3.ヒューマン・エラーの3因子について |
推薦0 |
東京福祉大学の科目終了試験の1-3です。
科目名:基礎演習Ⅰ
科目コード:1730
参考にしていただければと思います。
1.心理学の研究領域と研究法について
現代の心理学では、さまざまなテーマが扱われるためその研究分野は膨大な広がりを見せている。日本心理学会の専門区分によると第I部門から第V部門まで存在し、第I部門では知覚、第II部門では発達など全部で17個の要素がある。
このような専門区分をもつ心理学は大きく実験心理学系、教育心理学系、臨床心理学系、社会心理学系の4種類に分けることができる。その中でも実験心理学系は自然科学、教育心理学系は教育学、臨床心理学系は精神医学、社会心理学系は社会科学と隣接しており、何らかの接点をもっている。具体例としては教育心理学系も教育学も教育のことではあるが教育心理学は発達心理学の視点から人間形成がどのようなものかを解明し、教育の本質を追究するのに対し、教育学は教育行政や現場を調査・分析し、教育環境はどうあるべきかを研究する。
近年ますます他領域との接点が増え、心理学の全体像も少しずつ変わりつつある。そんな心理学を研究する時にはいろいろな研究方法があるが主なものとして実験法、面接法、テスト法、観察法がある。この中で面接法と観察法を例に挙げてみる。面接法とは面接をする人と面接を受ける人が対面して質疑や相談を行う方法であり、治療的面接法と調査的面接法に分けることができる。観察法は調査の対象となる人の行動や言動を、目視やビデオカメラによって観察する方法である。観察法も観察対象がどのような事態かによって、自然観察法と実験観察法に分けることができる。
また身長や体重とは違って、直接に測定することができない構成概念であるパーソナリティを測定するためのものさしを提供するものとして質問紙法と投影法がある。質問紙法とは質問紙を用いて定型的な質問に回答してもらい、その回答から査定を行う方法である。投影法とは曖昧な視覚的・言語的刺激を与え、それに対する連想や自由な反応から査定を行う方法である。この二つは検査対象が質問紙法は意識面で、投影法は無意識面であり、長所・短所も逆になっている。
上記の通り、心理学ではさまざまな研究法を用いて研究データを入手し、それをもとにして行動を説明したり、因果関係や相関関係を実証的に検討しようとする。研究データを入手するには心理測定が必要なため上記のような研究法によって測定し、得られた数値から平均点を求めて比較したり、複雑な統計処理をして、より一般的な特徴や傾向を明らかにしようとしていく。そしてこれから心理学の研究領域はさらに広がることが期待されている。
3.ヒューマン・エラーの3因子について
私たち人間は周りにいる他者について、その人がどんな人か推測したり、他者の内面についてさまざまに思いめぐらせ、時には家族や友人、恋人などとの間の対人関係について悩んだりしている。これらの例のように、他者に関した種々の情報を手がかりとして、パーソナリティ、情動、意図、態度、あるいは対人関係といった人の内面的特徴や心理過程を推論する働きを対人認知と呼ぶ。
私たちは、他者に関する自分なりの認知に基づいて相手を理解したり、将来の行動を予測し、その人物に対する接し方を決めていく。こういった点からも対人認知は人の社会的環境への適応にとって、きわめて重要な機能を果たしている。対人認知の主要な側面の一つに、他者のパーソナリティについての認知があり、他者に関した情報が限定された状況でのパーソナリティ認知は印象形成と呼ばれる。このような過程においては、他者が持つ刺激情報条件だけでなく認知者側の条件も大きく関係してくる。
前述した通り対人認知においては、認知する主体の側の条件も認知内容を大きく規定する。こうした認知者側の個体変数として重要なものの一つに暗黙裡の人格観(IPT)と呼ばれるものがある。これは人が過去のさまざまな他者との出会いを通して経験的に学習した、人のパーソナリティについての素朴な見方や考え方の体系を指している。A型は几帳面、スキンヘッドは怖い、大人しい人は気が弱いなど血液型や容貌を手がかりにして人を判断するのもIPTの働きによるものである。
IPTの構造は個人的親しみやすさ・社会的望ましさ・力本性の基本三次元に分類することができ、他者を認知する際にはどのような次元を重視するかといった側面での個人差が存在する。このことを問題とするものに認知的複雑性の概念がある。認知的複雑性とは他者を多次元的に認知できる能力と定義されており、認知複雑性が高い人は、他者に関し多様で、ときには矛盾するような情報をも適切な形で統合できると考えられている。それに対し、認知的に単純な人は正義か悪か良いか悪いかといったように他者を一面のみで決めつけて判断する傾向がある。
対人認知とは内面的特徴や心理過程を推論する働きのことであり、社会的環境への適応にとって、重要な機能を果たしている。また印象形成においては暗黙裡の人格観と呼ばれるものが働き血液型や容貌を手がかりにして人を判断するが、認知的複雑性が高いか低いかによって他者を見る目が変わってくる。
ヒューマンエラーの3因子について
人間の行動には、大小を問わず何らかの目的がある。その目的を達成するために人間は行動するが、待ち合わせ場所に向かう途中に路上ライブに見入ってしまったり、約束の場所のメモを書き間違えていて遅れてしまったりするといったエラーが発生することがある。このような人間が原因となって発生するミスや事故のことをヒューマンエラーと言う。
ヒューマンエラーはスリップ、ラプス、ミステイクの三種類に分類することができる。スリップとは目的は正しいが行為が誤っていて発生したエラーのことであり、自動車を停車しようと思ってブレーキを踏んだつもりが、誤ってアクセルを踏んでしまい壁に衝突したといった例が挙げられる。ラプスとは短期的な記憶違い、物忘れなどのことであり、スリップと同様に必ずしも目的が誤っているのではなく、あくまでも行為段階でエラーが起こる。ミステイクは意図的(故意)に誤った行為をした結果としてエラーとなった場合のことである。この場合の「故意」とは事故を意図的に発生させたという意味ではなく、誤った行為を意図的に行った場合を指す。
ヒューマンエラーには上記の三種類があるが、人間には主に以下の三つの失敗傾向の型がある。一つ目はアクションスリップで、物忘れや不注意からくる失敗で、自己の内部・外界の、進行中の行動以外の対象に注意がとらわれやすく、そのために失敗行動が生じやすくなる傾向を示す。
二つ目は認知の狭小化で、不安、せかされているといった高い負荷がかかった状態のとき、処理できる情報の範囲が狭くなり、状況内のある一点に注意が集中してしまって失敗を引き起こしやすくなる傾向である。アクションスリップと同様に外部・内部からの刺激によって混乱しやすい傾向があり、広く外部・内部への注意がいかなくなり、内外の情報の処理ができなくなる特徴を持つ。
三つ目は衝動的失敗で、状況への見通しが悪く、よく確かめないで行動する傾向のことであり、衝動的で反社会的行動をとる傾向と強い相関がある。自己の行動のコントロールが弱いことが特徴となっている。
人間が原因となって発生するミスや事故のことをヒューマンエラーと言い、スリップ、ラプス、ミステイクの三つに分類することができる。また人間の失敗傾向にはアクションスリップ、認知の狭小化、衝動的失敗があり、これが低い人はどんな場面でも冷静に判断でき、行為面での失敗が少ないが、高い人はエラーを起こしやすい傾向があり、いっそうの注意を払って行動することが必要である。