「完全雇用を考える」
■はじめに
昨今、何かと不景気が話題になっており、それにまつわる話は途絶えることがない。その中でも生活を一変させる可能性のある「リストラ」については大変注目度が高い。2002年に完全失業率が過去最悪の5.4%を記録したのはまだ記憶に新しいところである。
さて、最近ではフリーターやニートといった問題も取り上げられることが多い。「働きたくても働けない」のではなく「働きたくないから働かない」のである。
このような混沌とした状況において、「完全雇用」の意味するところとはなんなのであり、国のめざすべき「完全雇用」とは一体どのようなものなのであろうか。「完全雇用」の歩んできた歴史をたどりながら、その何たるかを考えてみたい。
■「完全雇用」の定義
完全雇用について考えていくにあたり、まずその定義を考えてみたい。これを考えるためにはいくつかのアプローチが存在する。
まず失業率の観点から考えるアプローチである。20世紀の英国の経済学者、ウィリアム・ベヴァリッジは3%の失業率が完全雇用の状態であるとした。また他の経済学者たちは、それぞれの国や時期、またそれぞれの経済学...