「やまなし」について
(1)作品の概観
作者は宮沢賢治であり、宮沢賢治が生前に発表した数少ない童話のうちの一つとなっている。死後に新聞での発表に先立って執筆されたとみられる下書きの草稿が発見されていて、発表形との間に異同があることが確認されている。そのため現行の「新校本宮澤賢治全集」(筑摩書房)では「初期形」として収録されている。初期形から文章が加筆・修正されている部分がいくつか見られる。かにの兄弟の会話がまったく違う会話になっているところなど興味深い。初期には蟹の兄弟ののんびりとした特にとりとめのない会話だったものが、教材となっている文章では、悪いというネガティブな表現がその後のさかなの行方を暗示させるような会話となっているところなどは教材として取り上げても面白いのではないかと感じた。他には表現が追加されているところなどがあり、象徴的、幻想的な作品への完成度がより高まっていると言える。
(2)事例における単元の目標と指導について
やまなしという宮沢賢治の幻想的な作品に触れることで、一つ一つの言葉を自分の中でじっくりと考えて想像を広げ、また他の児童との意見交換を活発に行うことでいろい...