いわゆる「胎児性傷害」について論ぜよ
(水俣病判例)
いわゆる「胎児性傷害」について論ぜよ
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胎児性傷害とは、胎児に故意または過失で傷害を与えることである。母体を通じて胎児に侵害を与え、出生により人となった段階で傷害・死亡の結果が発生する事例を胎児性致死傷害といい、「胎児は人であるか」つまり、人に対する罪が成立するかが問題となる。
事例としては水俣病事件が有名である。
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この裁判は被害者に対する業務上過失致死傷罪の適用が論点であり、胎児性致死が直接の判断の対象である。胎児性致死傷の問題の解決は故意犯としての傷害罪・殺人罪ないし過失犯としての過失致傷罪・致死罪の適用があるかにより、「人を殺した(199条)」、「人の身体を傷害した(204条)」など、客体はいずれも「人」であるという点がポイントになる。
第一審判決では、致死の結果が発生した段階で客体が人であれば足りるとして業務上過失致死罪の成立を肯定した。(熊本地判昭和54・3・22刑月11巻3号168頁)控訴審判決は、過失行為による侵害は、一部露出時点まで継続的に母体を介して及んでいたから、人に対する過失傷害として欠けるところはないとして、有罪の結論を維持した。(福...