水素結合
水素結合(すいそけつごう、英: hydrogen
bond)は、電気陰性度が大きな原子(陰性原子)に共有結合で結びついた水素原子が、近傍に位
置した窒素、酸素、硫黄、フッ素、π電子系などの孤立電子対とつくる非共有結合性の引力的相互
作用である。水素結合には、異なる分子の間に働くもの(分子間力)と単一の分子の異なる部位の間(
分子内)に働くものがある。
水素結合はもっぱら、陰性原子上で電気的に弱い陽性 (δ+)
を帯びた水素が(右上図:水分子の例)周囲の電気的に陰性な原子との間に引き起こす静電的な力とし
て説明されることが多い。つまり、双極子相互作用のうち、特別強いもの、として考えることもで
きる。ただし水素結合はイオン結合のような無指向性の相互作用ではなく、水素・非共有電子対の
相対配置にも依存する相互作用であるため、水素イオン(プロトン)の「キャッチボール」と表現さ
れることもある。
典型的な水素結合(5〜30
kJ/mol)は、ファンデルワールス力より10倍程度強いが、共有結合やイオン結合よりはるかに弱い
。水素結合は水などの無機物においても、DNAなどの有機物においても働く。水素結合は水の性質
、たとえば相変化などの熱的性質、あるいは水と他の物質との親和性などにおいて重要な役割を担
っている。
2011年に、国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって作られたタスクグループは、以下のような水
素結合の現代的な定義を提案している。
「水素結合とは、分子中の水素原子、またはXがHよりも電気陰性度が高い分子断片X–H中の水素原
子と、同じまたは異なる分子中の原子または原子のグループとの間の引力的相互作用で、結合が形
成されている証拠があるもののことである。
The hydrogen bond is an attractive interaction between a hydrogen atom from a molecule or a
molecular fragment X–H in which X is more electronegative than H, and an atom or a group of
atoms in the same or a different molecule, in which there is evidence of bond formation.」
—IUPAC Technical Report
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