救護施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて生活扶助を行う生活保護法に基づく施設であり、重複障害のある者やアルコール依存症者など様々な障害疾病を持つ者が生活を営む施設である。2014年4月から障害者総合支援法の地域生活移行支援対象者に救護施設入所者も含まれることとされ、救護施設入所者の地域への移行は喫緊に取り組むべき課題となっている。そこで、本研究は、県内の救護施設全入所者の生活実態を把握するとともに、地域生活移行の課題を明らかにすることを目的とした。
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救護施設入所者の現状と課題についての研究
-地域生活移行の視点から-
筑 波 大 学 大 学 院
人 間 総 合 科 学 研 究 科 生 涯 発 達 専 攻
リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン コ ー ス 25 期 生
201340054 猪 野 塚 将
要 旨
救 護 施 設 は 、 身 体 上 又 は 精 神 上 著 し い 障 害 が あ る た め に 日 常 生 活 を 営 む こ と が
困 難 な 要 保 護 者 を 入 所 さ せ て 生 活 扶 助 を 行 う 生 活 保 護 法 に 基 づ く 施 設 で あ り 、 重
複 障 害 の あ る 者 や ア ル コ ー ル 依 存 症 者 な ど 様 々 な 障 害 疾 病 を 持 つ 者 が 生 活 を 営 む
2014 年 4 月 か ら 障 害 者 総 合 支 援 法 の 地 域 生 活 移 行 支 援 対 象 者 に 救 護 施 設 入 所
者 も 含 ま れ る こ と と さ れ 、 救 護 施 設 入 所 者 の 地 域 へ の 移 行 は 喫 緊 に 取 り 組 む べ き
施 設 で あ る 。
課 題 と な っ て い る 。
複 数 の 先 行 研 究 か ら 救 護 施 設 は 、 時 代 の 要 請 に 応 じ 、 そ の 機 能 と 役 割 を 変 化 さ
せ て き た こ と が 明 ら か に な っ た が 、 施 設 入 所 者 の 生 活 実 態 に 焦 点 を 当 て 、 地 域 生
活 移 行 の 実 情 と そ の 課 題 を 取 り 上 げ た 文 献 的 研 究 は ほ と ん ど 確 認 で き な か っ た 。
そ こ で 、 本 研 究 は 、 埼 玉 県 内 の 救 護 施 設 全 入 所 者 の 生 活 実 態 を 把 握 す る と と も
に 、 地 域 生 活 移 行 の 課 題 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。
第 1 研 究 で は 、埼 玉 県 内 救 護 施 設 の 全 入 所 者 の 処 遇 記 録 台 帳 及 び 個 別 支 援 計 画
の 各 種 帳 票 類 か ら 得 ら れ た デ ー タ を 集 計 ・ 分 析 す る こ と で 、 施 設 生 活 上 の 実 態 と
地 域 生 活 移 行 上 の 課 題 を 明 ら か に す る こ と と し た 。
第 2 研 究 で は 、第 1 研 究 か ら 明 ら か と な っ た 施 設 入 所 者 の 現 状 を 踏 ま え 、地 域
生 活 移 行 上 の 課 題 に つ い て 、 施 設 関 係 者 に 面 接 調 査 を 実 施 し 、 施 設 運 営 上 の 課 題
や 地 域 生 活 移 行 へ の 取 組 状 況 か ら 入 所 者 の 地 域 生 活 移 行 の 課 題 を 明 ら か に し 、 量
的 な 実 態 調 査 で あ る 第 1 研 究 を 補 完 す る こ と と し た 。
結 果 、入 所 者 の 高 齢 化 と 入 所 期 間 の 長 期 化 に よ り 地 域 生 活 の 選 択 肢 が 狭 め ら れ 、
生 活 意 欲 の 減 退 や 、 身 体 機 能 の 低 下 す る 傾 向 が 明 ら か と な っ た 。 概 し て 入 所 者 の
日 常 生 活 能 力 は 高 い が 、 服 薬 管 理 、 金 銭 管 理 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 な ど の 手
段 的 日 常 生 活 能 力 が 低 調 な も の が 少 な く な か っ た 。 一 方 、 入 所 者 256 名 中 28 名
は 、 何 ら か の 自 立 し た 生 活 を 希 望 し て お り 、 一 人 暮 ら し を 希 望 す る 者 は 16 名 存
在 す る こ と が 確 認 で き た 。こ れ ら の 地 域 生 活 移 行 希 望 者 の 年 齢 は 、平 均 よ り 若 く 、
入 所 期 間 も 平 均 よ り 短 い こ と も 判 明 し た 。
ま た 、 面 接 調 査 で は 、 高 齢 化 と 入 所 期 間 の 長 期 化 が 地 域 生 活 の 移 行 先 の 選 択 肢
を 狭 め 、地 域 生 活 移 行 が 進 ま な い 大 き な 要 因 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。こ の た め 、
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移 行 希 望 が あ り 地 域 生 活 移 行 が で き る と 判 断 さ れ た 者 に は 、 早 期 移 行 支 援 が 重 要
で あ る こ と も 共 通 し た 指 摘 で あ っ た 。 地 域 生 活 移 行 を 推 進 す る 上 で 、 地 域 生 活 移
行 に 携 わ る 職 員 の 配 置 と 、 地 域 の 理 解 と 協 働 が 必 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
以 上 の こ と か ら 、 入 所 者 が 地 域 生 活 へ の 移 行 を 希 望 す る 場 合 、 集 中 的 か つ 早 期
に 地 域 生 活 移 行 へ 繋 ぐ た め の 支 援 が 効 果 的 で あ る が 、 こ の た め に は 、 施 設 内 部 か
ら の 地 域 生 活 移 行 へ の 働 き 掛 け だ け で な く 、 地 域 生 活 移 行 支 援 に 取 り 組 ん で い る
一 般 相 談 支 援 事 業 所 な ど 、 外 部 の ノ ウ ハ ウ を 活 用 す る な ど 地 域 の 社 会 資 源 と の 連
携 を 一 層 推 進 す る こ と が 重 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。
本 研 究 に お い て 、 救 護 施 設 の 地 域 生 活 移 行 の 課 題 を 明 ら か に し 、 そ れ ら の 課 題
へ の 対 応 を 示 す こ と が で き た こ と は 意 義 が あ っ た と 思 わ れ る 。 今 後 は 、 地 域 生 活
移 行 者 の 追 跡 等 に よ る 地 域 生 活 の 定 着 を 明 ら か に し て い く 必 要 が あ る と 考 え る 。
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- 目 次 -
要 旨 ····························································· 1
目 次 ····························································· 3
第 1 章
は じ め に
1 生 活 保 護 と 救 護 施 設 ········································· 6
2 救 護 施 設 が 果 た し て き た 歴 史 的 背 景 と 役 割 ····················· 6
( 1) 救 護 施 設 の 創 設 の 歴 史 的 背 景 と 役 割 ·························· 6
( 2) 時 代 の 変 遷 と 救 護 施 設 の 役 割 と そ の 変 化 ······················ 7
3 救 護 施 設 の 現 状 ············································· 8
4 救 護 施 設 と 地 域 生 活 支 援 へ の 取 り 組 み ························· 8
5 障 害 者 総 合 支 援 法 の 地 域 生 活 移 行 支 援 対 象 施 設 と し て の 救 護 施 設 · 9
第 2 章 研 究 の 目 的 と 意 義
1 文 献 に よ る 先 行 研 究 の 調 査 結 果 ······························· 10
2 研 究 の 意 義 ················································· 11
3 研 究 の 目 的 ················································· 11
4 調 査 研 究 の 流 れ ············································· 12
第 3 章 第 1 研 究 救 護 施 設 入 所 者 に 対 す る 調 査 :個 別 記 録 の 整 理 ・ 分 析
1 目 的 ······················································· 13
2 方 法 ······················································· 13
3 対 象 ······························...