Ⅰ有機化合物の分離・精製
1.目的
酢酸エチル溶液から,サリチル酸,p-アミノ安息香酸エチル,α-テトラロンを抽出・分離・同定する.
2.方法
酢酸エチル溶液(50mL)に炭酸水素ナトリウムを加え,サリチル酸を分離し,希塩酸を加えることによってp-アミノ安息香酸エチルを分離する.そして有機層に残ったものが,α-テトラロンとなる.また,サリチル酸及びp-アミノ安息香酸エチルについては,再結晶により精製する.
3.使用試薬・使用器具
表1.使用試薬
試薬 分子量 使用量 比重 モル数(mol) ①サリチル酸エチル 138.12 1g 0.00724 ②p-アミノ安息香酸エチル 165.19 1g 1.5105 0.00605 ③α-テトラロン 146.19 1g 1.0988 0.00684 ④酢酸エチル 88.11 70mL 0.901 0.7158 ⑤炭酸水素ナトリウム 84.01 30mL 2.2 0.7856 ⑥希塩酸 36.50 40mL 1.19 1.3041 ⑦水酸化ナトリウム 40.00 40mL 2.13 2.31 ⑧無水硫酸ナトリウム 103.07 1.97
図1.使用器具
4.操作および観察
5.結果
収率については以下の式を用いた。
化合物A(サリチル酸)について
・再結晶前
無色針状結晶 m.p. 157.6~158.8℃(lit. 159℃)
収量:0.7436g 収率:74.36%
・再結晶後
無色針状結晶 m.p. 158.9~159.9℃(lit. 159℃)
収量:0.5290g 収率:63.83%
化合物B(p-アミノ安息香酸エチル)について
・再結晶前
無色粉末状結晶 m.p. 90.4~92.0℃(lit. 92℃)
収量:0.2944g 収率:29.44%
・再結晶後
無色粉末状結晶 m.p. 90.5~91.0℃(lit. 92℃)
収量:0.1984g 収率:21.78%
化合物C(α‐テトラロン)について
油状 収量:4.5031g
6.考察
サリチル酸について,再結晶前と再結晶後の収率が10%以上の差が出てしまったのは,再結晶後,結晶の一部が非常に細かくなってしまい,吸引ろ過をする際に,ろ過ビンの中に入ってしまった為であると考えられる.
p-アミノ安息香酸エチルについて収率が30%を切ってしまったのは,サリチル酸において,結晶が析出する際に氷水を用いたのに対し,p-アミノ安息香酸エチルの際には用いなかったことから,結晶を析出させる際に氷水を用いて,温度を下げた方が,結晶が析出しやすいのではないかと考えられる.また,p-アミノ安息香酸エチルを吸引ろ過する際に,ろ紙がずれてしまい,ろ過ビンの中に析出した結晶が入ってしまったことも収率が低くなった原因だと考えられる.
しかしながら,サリチル酸についてもp-アミノ安息香酸エチルにおいても,融点の測定値と文献値との違いがあまりないことから,収率としては低いながらも,純度としては高いことがわかる.そして,p-アミノ安息香酸エチルについては言えないが,サリチル酸について再結晶後,融点測定値が文献値に近づいたことから,純度が再結晶前と再結晶後では,後のほうが高くなったことがわかる.
また,α-テトラロンについては,この実験ではシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行っていない為に収量が高かったのだと考えられる.
7.問題解答
抽出操作により最終的に得られた化合物A~Cは,それぞれ何か.また,なぜ
Ⅰ有機化合物の分離・精製
1.目的
酢酸エチル溶液から,サリチル酸,p-アミノ安息香酸エチル,α-テトラロンを抽出・分離・同定する.
2.方法
酢酸エチル溶液(50mL)に炭酸水素ナトリウムを加え,サリチル酸を分離し,希塩酸を加えることによってp-アミノ安息香酸エチルを分離する.そして有機層に残ったものが,α-テトラロンとなる.また,サリチル酸及びp-アミノ安息香酸エチルについては,再結晶により精製する.
3.使用試薬・使用器具
表1.使用試薬
試薬 分子量 使用量 比重 モル数(mol) ①サリチル酸エチル 138.12 1g 0.00724 ②p-アミノ安息香酸エチル 165.19 1g 1.5105 0.00605 ③α-テトラロン 146.19 1g 1.0988 0.00684 ④酢酸エチル 88.11 70mL 0.901 0.7158 ⑤炭酸水素ナトリウム 84.01 30mL 2.2 0.7856 ⑥希塩酸 36.50 40mL 1.19 1.3041 ⑦水酸化ナトリウム 40.00 40mL 2.13 2.31 ⑧無水硫酸ナトリウム 103.07 1.97 ...