クローン技術の倫理的な問題について
クローン技術とは、ある個体とまったく同じ遺伝子を持った個体を意図的に作り出すことである。この技術が急速に世間に広まったのはクローン羊のドリーの誕生という出来事からであろう。そこから我々はクローン技術に関して様々な議論を続けている。
そもそもクローン技術とは一体どのようなことに役立つのだろうか。倫理上問題がないとしても、何の役にも立たないのであればまったく意味がないだろう。これにはいくつかのことが考えられる。
一つめの利点は「おいしい食品を増やすことができる」ということである。これはいわゆる家畜クローンというもので、つまりおいしい肉をもってたりや卵を産んだりする家畜とまったく同じ遺伝子を持つ家畜をクローン技術によって増やすことができるというものだ。これによって我々はより味において質の高い食品を安易に作り出し、手に入れることができるようになる。
二つめの利点は「結婚せずとも子供が作れる」ということである。結婚はしたくないが、子供は欲しい。しかし、できれば自分の遺伝子だけで作りたい。そういうときに、クローン技術は完全に自分と同じ遺伝子を持った子供を作ることを可能にしてくれる。
しまったときにそのクローンから代替パーツをとることができる。しかも、子のパーツは自分のものとほぼ同じと言えるから拒絶反応が起こらない。
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まず食品について。「得体のしれない技術によって“造られた”食品は本当に安全といえるのだろうか」ということが根底にあるのではないかと私は考える。このような実話がある。遺伝子を組み替えることによって、通常の数十倍の速度で成長する鮭が作られた。この技術が応用されれば世界の食糧難は解決されるだろう。しかし、誰ひとりとして、気味悪がって完成した鮭を食べようとはしなかった。また、スーパーに行っても「遺伝子組換え大豆はしようしておりません」などという表示が目につく。このように人々は何か得体のしれないものを自分の体内に入れることを気味悪がって進んで行いはしない。
次に同じ遺伝子を持った人間を作りだすことについて。遺伝子プールの減少ということもあるが、もっと大きな理由としては子供を作りだすにとどまらず、全く同じ人間を作れるようになるのではないかという不安とそのような状態になったときに起きうると考えられていることが問題であると言えるだろう。スターウォーズにおいて、最強の兵士のクローンが大量に作られ、戦争に使われるという場面がある。また、人によってはヒットラーのような恐ろしい人間が大量に作り出されたらどうするのかということを懸念している人もいる。また、現在の技術では、ある程度成熟した個体から作り出された個体のテロメアは生物の初期状態よりも短く、よって寿命が短い。このような人間を作り出してはたして良いのだろうかという問題もある。寿命が短かった)
最後に、代替パーツとしての利用について。食品と同じように得体の知れないものを体の中に取り込むことへの恐れのようなものもあるが、もっと大きな問題は「体の代替パーツとしてだけに人間を造ることは許されるのだろうか」ということである。もし、心臓などの取ってしまえば生命を維持できないようなパーツを大体品からとるとき、その大体用のクローンは死ぬこととなる。オリジナルの人間を助けるために一人のクローンを殺すということである。はたしてこれは許されることなのだろうか。先に書いたようにこのクローンは代替パーツとしてしか生み出されていない。つまり、極端にいえば、元から殺すことを目的に作られた人間である。このような人間を作り出すことはおそらく誰もがためらうのではないだろうか。最初から意識を失わせておく、脳死にしておく、そのようなことを行えば良いと思う人間もいるかもしれないが、本質的にそれは間違っている。一人の人間を勝手に作り出し、そして自分たちの都合で殺すことになるということは変わらないからだ。提供の不足は深刻な問題であり、それを利用して人身売買や臓器売買が貧国で行われているのも事実。この方法によってこれらが減少するのであれば、致し方ないという考えもなくもない。しかし、もしこのようなことを実行した場合、人間の神を、自然を超越したという奢りがなお一層激しくなり、倫理の崩壊が加速するのではないかと私は懸念している。
腹は代えられぬという状況に立たされたときのみ止むを得ず実行することができることであり、軽い気持ちで実用化してよいものではないと考えている。