精神医療の歴史及び精神医学の概念について述べよ

閲覧数6,819
ダウンロード数26
履歴確認

    • ページ数 : 8ページ
    • 会員660円 | 非会員792円

    資料紹介

    「精神医療の歴史及び精神医学の概念について」
    精神的な障害や疾病は近代になってから発症するようになったわけではなく、その歴史は長く深いものがある。欧米での精神医療を歴史的な観点から見ていくと、そこには精神障害者に対する保護体制や迫害とか何度も繰り返され行われてきた。そういった繰り返しは、その時々の社会的な背景に合わせ常に考え方に影響をもたらしてきたのだ。
    13世紀頃のベルギーでは、地域住民が精神障害者を家庭保護してきた。またヨーロッパでは中世にかけ、精神障害者はキリスト教の考えの元では悪魔や悪霊がとりついているのだと考えられ、ヨーロッパ各地で魔女狩りが行われ、宗教裁判にかけられた後、拷問や処刑などの組織的な迫害の対象となることとなった。
    18世紀のフランスでは、ビセトール病院のピネルが精神疾患者をそれまでの鉄の鎖から解放をし、病める人間であるとして扱うようになった。またイギリスでも、テュークがヨーク救護所で道徳的な療法を精神疾患者に行い、コノリーが精神疾患者に対して、無拘束の原理を確立し人間としての人権の考え方を築いた。
    ヨーロッパで精神医学が大きな発展をしたのは、1900年前後と考えられる。この時代には、ドイツのクレペリンやオーストリアのフロイトなどの精神医学に大きな影響を残す事となる著名な精神医学者が現われたのだ。
    クレペリンは精神疾患の経過について注目をし、原因不明とされた内因性精神疾患を早発性痴呆(認知症)と躁鬱病とにわけた。前者については、後にスイスのブロイラーが病名として統合失調症(精神分裂病)を提唱している。同じ頃、フロイトが精神分析学を確立した。これは後に力動精神医学の基礎を造り、さまざまな精神療法へと発展を遂げていく。作業療法もこの頃から始められるようになり、ジーモンがギュータースロー病院で自らの経験に基づいて作業療法を体系化していったことに始まり各地へと次々と広がっていった。
    アメリカでは、ヨーロッパの流れを受けながら独自の活動と治療が行われていくようになっていった。アメリカのビアーズは、自らの精神病の体験から『わが魂に会うまで』を書き残した。ビアーズの精神衛生運動は力動精神医学のリーダーであるマイヤーに支援をされて、アメリカだけではなく世界中に徐々に拡大をしていった。精神疾患の治療を大きく発展させたのは、1952年フランスでの統合失調症の治療薬としてクロルプロマジンが誕生した。その後、より抗幻覚や抗妄想作用の強いハロペリドールが開発され、これらの抗精神病薬による薬物療法の発展により精神医療が大きく変化していった。
    日本の精神医療は、独自の風流などに大きな影響を受けてきている。信仰する宗教の影響か、精神疾患というものが外部からのなんらかの原因によって起こる症状とされ、地域社会や家庭保護をして隠す習慣があった。明治時代になると、富国強兵という思想が進み、精神をはじめとする障害者は社会的弱者とされ社会から隔離され扱われた。1900年年に成立した精神病者監獄護法では、私宅監置が認められ、法律から保護と監護を推進していた。これは治療を目的とせずに、障害者を社会から隔離することを定め、その扱いは悪かった。呉秀三は1901年に『無拘束の理念』を提唱し、精神疾患者達に初めて作業療法を行った。呉秀三は自身の経験から、精神疾患者に対し無条件で拘束を強いる国や体制を批判した。
    1919年には精神病院法が成立し、精神疾患者に対する保護治療へ道が開き始めたが、まだ監護体制も残されていた。その後、1950年の精神衛生法の成立により、ようやく治療という近

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    「精神医療の歴史及び精神医学の概念について」
    精神的な障害や疾病は近代になってから発症するようになったわけではなく、その歴史は長く深いものがある。欧米での精神医療を歴史的な観点から見ていくと、そこには精神障害者に対する保護体制や迫害とか何度も繰り返され行われてきた。そういった繰り返しは、その時々の社会的な背景に合わせ常に考え方に影響をもたらしてきたのだ。
    13世紀頃のベルギーでは、地域住民が精神障害者を家庭保護してきた。またヨーロッパでは中世にかけ、精神障害者はキリスト教の考えの元では悪魔や悪霊がとりついているのだと考えられ、ヨーロッパ各地で魔女狩りが行われ、宗教裁判にかけられた後、拷問や処刑などの組織的な迫害の対象となることとなった。
    18世紀のフランスでは、ビセトール病院のピネルが精神疾患者をそれまでの鉄の鎖から解放をし、病める人間であるとして扱うようになった。またイギリスでも、テュークがヨーク救護所で道徳的な療法を精神疾患者に行い、コノリーが精神疾患者に対して、無拘束の原理を確立し人間としての人権の考え方を築いた。
    ヨーロッパで精神医学が大きな発展をしたのは、1900年前後と考え...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。