社会科学概論
「ギャップごしのコミュニケーション」の可能性を、パレスチナ問題から探る
■「ギャップごしのコミュニケーション」は可能か
保苅実氏は、『ラディカル・オーラル・ヒストリー オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』の中で「人が過去を経験する歴史時空というものは、根源的に多元的なので、それはもう僕らが決して追体験できないような、理解できないような、決して埋まらないギャップが厳然としてある。(中略)ただ、ギャップはあるんだけれども、ギャップごしのコミュニケーションは可能なはずだって思うんですよ。つまり、(中略)『あなたの経験を深く共有することはできないかもしれないけれども、それがあなたの真摯な経験であるということは分かります。だから、あなたの歴史経験と私の歴史理解とのあいだの接続可能性や共奏可能性について一緒に考えていきましょう』ということはできるんじゃないか。」と述べている。
しかし、現実に置き換えてみると、保苅氏が述べているような「ギャップごしのコミュニケーション」は、そう容易いものではない。そこで、本レポートでは、保苅氏が述べる「ギャップごしのコミュニケーション」は必...