領域主権の効果として国家管轄権が当該国家の領域に及ぶことは当然であるが、当該領域を越えて国家管轄権を及ぼす場合の根拠としてどのような考え方が発展してきたか、5つの考え方につき、その根拠、それらの形成や確認に関連する具体的な事例や立法例、条約例を示して論ぜよ。その際、少なくとも、「ローチュロス号事件」「刑法2条」「刑法3条」「刑法3条の2」「タジマ号事件」「アルコア事件」「ティンバーレン事件」「国連海洋法条約第105条」がそれぞれの考え方を確認し適用する上でどのような意義を有したかの説明を含めること。
中央大学法学部通信教育課程
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1. 国家は、自国領域内で行われた犯罪について管轄権を持つが、だからといって、自国領域外で行われた犯罪については管轄権をもたないという意味ではない。国家はさまざまな根拠に基づいて、自国領域外で行われた犯罪についても管轄権を行使している。この根拠として、自国領土や船舶内等での犯罪における属地主義、自国民による犯罪であることを理由とする積極的属人主義、自国民に対して被害を及ぼしたことを理由とする受動的属人主義、通貨偽造のように自国の利益を侵害したことを理由とする保護主義が挙げられる。ただし、受動的属人主義については、犯罪加害者が被害者の国籍やその国の刑法などを知らない場合もあることから、これを否定する説もある。
2. 属地主義
特定の人や物が自国領域内に存在すること、または、特定の行為が自国領域内において生じていることを根拠に管轄権を行使することをいう。日本では刑法1条がこの表れである。船舶などの場合、ひとつの旗国の旗のみを掲げて航行し、原則としてその船舶は旗国の排他的管轄権に服することを指す旗国主義がこの例...