【概要】
本レポートでは、GHQ(連合国軍総司令部)が「社会救済に関する覚書」において提示した三原則のうち、公的責任の原則について説明し、その後この原則が社会福祉法人制度の創出に及ぼした影響を論じる。
【目次】
1.公的責任の原則について
2.公的責任の原則が社会福祉法人制度創出に及ぼした影響
【引用・参考文献】
① 社会福祉法人の在り方等に関する検討会(2014)『社会福祉法人制度の在り方について』
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000050215.pdf
② 社会福祉士養成講座編集委員会 編(2014)『現代社会と福祉 (新・社会福祉士養成講座) 第4版』中央法規出版
③ 岩田、永岡、武川ら編(2003)『社会福祉の原理と思想』有斐閣
④ 菊池、室田ら編(2008)『日本社会福祉の歴史 5版』ミネルヴァ書房
⑤ 大藪(2016)『社会福祉サービス提供主体のあり方について』中部学院大学・中部学院大学短期大学部 研究紀要.17号.61-66
⑥ 加川(2017)『戦後改革期の社会福祉制度構築と公私分離の諸相 ─社会福祉主事配置と民生委員制度改革をめぐって─』島根大学社会福祉論集6 ,1-15
1. 公的責任の原則について
GHQは1946年に「社会救済に関する覚書」(SCAPIN775)を提出し、「無差別平等の原則」、「必要十分の原則」、「公的責任の原則」の3つを示した。これらは社会福祉の根源となる憲法25条など憲法に色濃く反映されている。
中でも戦後の日本の社会福祉において公私分担の在り方に影響を与えたのは「公的責任の原則」であった。「公的責任の原則」は「国家責任の原則」と「公私分離の原則」という2つの側面を持っている。
まず「国家責任の原則」では社会福祉における国の責任が明確化された。そして、厚生省を頂点とした機関委任という手続きを媒介に、都道府県・市町村を実施機関とする中央集権的な福祉行政の体系を生み出した。戦前には不十分であった公的福祉の整備が進められることとなった。
また、「公私分離の原則」は社会福祉の実施主体を「公的」と「私的」を明確に区別するということである。これは憲法89条に色濃く反映されており、公の支配に属さない教育、慈善、博愛の事業に対する公金の支出を禁止している。そのため、後述する戦後社会福祉の根幹にかかわる影響をもたらした。
2.公的責任の原則が社...