【文献番号】28082672 法人税更正処分取消請求控訴事件 東京高等裁判所平成14年(行コ)第242号 平成15年9月9日判決
①事件概要
↓医学論文の英文添削依頼
↑料金徴収(平均的な値段)
←3倍以上
←外注→ 料金負担
製薬業者である控訴人は、医薬品を販売する大学病院の医師等から海外の雑誌に掲載するための医学論文の英文添削依頼を受けた。控訴人は、当該英文添削をアメリカ添削業者2社に外注し、医師等に対しては、平均的な英文添削料金を徴収していたが、外注業者に対してはその3倍以上の料金を支払い、差額分を負担していた。
被控訴人(税務署)は、英文添削を依頼した医師等が、控訴人の「事業に関係ある者」と判断し、本件負担額の支出の目的が医師等に対する接待等のためであって、本件負担額は交際費に該当するとして、控訴人の3事業年度にわたる法人税の更正処分を行った。
これに対し、控訴人は、本件負担額は交際費でなく損金算入が認められる寄付金に該当すると主張して、更正処分の取消を求めた。
②この事件に関係する法律
租税特別措置法
(交際費等の損金不算入) 第六十一条の四
3 第一項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(第二号において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の 法人税法第二条第十五号 に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用
③控訴人の主張(要約)
控訴人が英文添削費用の差額を負担した者の中には,控訴人が製造・販売する医薬品に深く携わらない者が多く含まれているため,事業関係者に該当しない。また,処方権限を有する医師も,英文添削の依頼を受けたことにより今後の医薬品に影響を与えるものではないので,事業関係者には当たらない。
控訴人は,本件英文添削を学術の発展による社会公共の利益の増進を目的として行ってきたものであって,接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のためではない。
添削の依頼者は、医薬品に深く関係しない者であり、また差額分を控訴人が負担していることを知らなかった。更に、添削を依頼した研究者は、正当な対価を支払って役務の提供を受けたと認識していた。したがって、控訴人の添削料の差額負担によって,親睦の度合いが密になるということはない。また、相手方が利益を受けたと認識していない行為によって,控訴人の医薬品の売上が増加するとは考えられない。
④被控訴人の主張(要約)
(1)②の条文に規定する「接待,供応,慰安,贈答」は,いずれも相手方の歓心を買うことによって相手方との親睦の度を密にしたり,取引関係の円滑な進行を図る行為の例示であり,その名目にかかわらず,取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜供与が広く含まれる。
相手方において,当該支出によって
【文献番号】28082672 法人税更正処分取消請求控訴事件 東京高等裁判所平成14年(行コ)第242号 平成15年9月9日判決
①事件概要
↓医学論文の英文添削依頼
↑料金徴収(平均的な値段)
←3倍以上
←外注→ 料金負担
製薬業者である控訴人は、医薬品を販売する大学病院の医師等から海外の雑誌に掲載するための医学論文の英文添削依頼を受けた。控訴人は、当該英文添削をアメリカ添削業者2社に外注し、医師等に対しては、平均的な英文添削料金を徴収していたが、外注業者に対してはその3倍以上の料金を支払い、差額分を負担していた。
被控訴人(税務署)は、英文添削を依頼した医師等が、控訴人の「事業に関係ある者」と判断し、本件負担額の支出の目的が医師等に対する接待等のためであって、本件負担額は交際費に該当するとして、控訴人の3事業年度にわたる法人税の更正処分を行った。
これに対し、控訴人は、本件負担額は交際費でなく損金算入が認められる寄付金に該当す...