乗数効果の前にデフレ・ギャップから論じていきたい。働ける人はみんな働きにでた状態である完全雇用を実現する総需要に対し、現実の総需要が不足している場合、その不足分の大きさが『デフレ・ギャップ』になる。デフレ・ギャップを生じている場合は有効需要が不足しているのだから、そのギャップを埋めるために、総需要を拡大する政策つまり財政拡大がとられるべきである。そこでギャップの大きさが500億円あるとして、この500億円を埋めるために必要な政府支出の増加分はいくらになるのか。直観的に考えると500億円になりそうだが、それよりも少なくてすむというのがケインズ理論の『乗数メカニズム』である。
例えば政府がA会社に100億円の公共事業を発注するとする。政府支出Gは需要項目の中に入っているから、第一段階として、総需要が100億円増えるが、公共事業の効果はこれだけにはとどまらない。100億円はA社の収入になるが、A社はこれを全部貯蓄するわけでもないので、かなりの額は消費すると考える。限界消費性向を0.8とし100×0.8=80億円使ったと考えておくと、A社がB社に80億円分の業務を発注したことになる。A社はB社から80億円のサービスを購入したので第二段階として、総需要が80億円増える。そしてこの80億円はB社の所得となり、B社が80×0.8=64億円の商品をC社から買えば、第三段階として、総需要がまた64億円増える。このように以上のプロセス(波及過程)、つまり乗数効果は無限に続くが、限界消費性向が1よりも小さいために増加分は減少していき、増加分の総和はある一定の値を超えることはない。上記の例でいくと、総需要の増加分の総和(=△Y)の大きさは『初項100、公比0.8で無限に続く等比数列の和』を求めることと同じになる。つまり計算式に表すと、『△Y=1/1−b×△G』になる。
乗数効果の前にデフレ・ギャップから論じていきたい。働ける人はみんな働きにでた状態である完全雇用を実現する総需要に対し、現実の総需要が不足している場合、その不足分の大きさが『デフレ・ギャップ』になる。デフレ・ギャップを生じている場合は有効需要が不足しているのだから、そのギャップを埋めるために、総需要を拡大する政策つまり財政拡大がとられるべきである。そこでギャップの大きさが500億円あるとして、この500億円を埋めるために必要な政府支出の増加分はいくらになるのか。直観的に考えると500億円になりそうだが、それよりも少なくてすむというのがケインズ理論の『乗数メカニズム』である。
例えば政府がA会...