1・俘囚と夷俘
俘囚とは、もともと蝦夷であるが、そのうちで特に内地の生活様式に慣れてしまったもののことを指した。一方で夷俘とは俘囚と比較し、生活様式なり生活態度、体制側にたいする帰順協力等にかなりの差異があったので、順化のもっとも進んだものを俘囚、次程度のものを夷俘と呼び、その他の未熟な一般のものとは区別し、順化程度に重点を置き、俘囚や夷俘とを並び称するような場合は明確に区別した。また俘囚と夷俘は順化協力程度に重点が置かれたために、その待遇においても差別があった。差別の例としては栄爵の授けかたなどが挙げられる。俘囚には一般内地人と同様に官位令による叙位法がとられ、例として、正何位上や従何位下などが授けられた。一方で夷俘に対しては固有の第何等という授爵法がとられた。上述のように俘囚は、夷俘とともに、蝦夷出身であるにもかかわらず、正式な令制位官を授けられ、夷俘と異なり律令制度において優遇された。律令制度において位階とは朝廷における序列である。位階は官職に補任されるための必須条件であった。したがって順化程度の高い蝦夷である俘囚が、律令制度において位階を認められるということは、官職に任命され...