摂食嚥下障害のある患者さんへの食事援助

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    資料紹介

    資料の原本内容

    摂食嚥下障害のある患者さんへの食事援助

    学習目標:嚥下障害について理解し、食事介助時の留意点について理解して援助することができる
    ●摂食嚥下障害とは

     摂食嚥下とは、食物を認識し、口に取り込み、かみ砕き、咽頭に送り込み、飲み込むといった一連の要素で構成されている。加えて食べる判断や咀嚼、食行動など、「食べること全体」を含んでいる。この過程のどこかに障害があると摂食嚥下障害が生じる。

     看護では、摂食嚥下障害の予防とともに、早期発見と早期回復のための寛恕援助が重要である。摂食嚥下障害は、疾病や障害の程度により援助方法が異なる。正確なアセスメントから導き出した安全で効果的な援助を通して、高齢者の健康回復やQOLの向上に努める。
    〇摂食嚥下のメカニズム

     摂食嚥下運動は、大脳皮質や脳幹にある嚥下中枢・咀嚼中枢から抹消神経への刺激伝達により咀嚼・嚥下・上肢の諸筋肉を動かす巧妙な統合・協調作用である。摂食嚥下障害は、それらの神経系に何らかの問題が生じたときに発症する。通常、嚥下5期モデルとして現れる。摂食嚥下にかかわる諸器官は以下である。
    〇摂食嚥下障害の原因

     摂食嚥下機能は、一次的原因として加齢による嚥下筋力の低下、舌圧の低下、食塊輸送・制御能力の低下、味覚・嗅覚の低下、歯と義歯装着などの問題ある。二次的原因では、活動・栄養・疾患によるものがある。原疾患治療による入院や施設入所による活動減少や手術などの長期の禁食などの侵襲は、サルコペニアが進行し全身の筋力低下により嚥下関連筋群も変化が起こる。(サルコペニアとは加齢も含めすべての原因による筋肉量低下と筋力低下である。)摂食嚥下障害高齢者には、低栄養や廃用症候群などのサルコペニアを有する人が増加している。

     摂食嚥下障害の原因は、器質的原因、機能的原因、心理的原因、看護・介護上の問題などがある。不適切な介護や看護援助は、不良姿勢や疲労により食事量の減少や食事時間の延長、時には誤嚥や窒息の間接的な原因となる。
    ●摂食嚥下障害のある患者へのポジショニング

    〇ポジショニングの目的

     ポジショニングの目的は、姿勢を調節することにより、口腔や咽頭腔の位置や形態を変え、抗重力により食物の流れを変えて誤嚥を予防することである。ポジショニングは、車いすでの座位姿勢やベッド上で行われる。

    正しい姿勢の条件は

    ①体感が安定し嚥下諸筋群が運動しやすい

    ②誤嚥しにくい

    ③上肢が使いやすくスプーンやコップを口に運びやすい

    ④食事中に疲労しない

    ⑤呼吸がしやすく咳を出しやすい

    ことである。適切なポジショニングは、食欲や食事の自立を促し、誤嚥や失速のリスクを最小限にする。

     食事の不安定姿勢は、

    ①嚥下困難により嚥下のリスクが高まる

    ②食事の中断により食事時間の延長となる

    ③食物の通過障害により食事量の不足や低栄養を招く

    ④むせや誤嚥により食事に対する恐怖や拒否につながる

    などがあげられる。
    〇ポジショニングの目安

     ベッド上では、リクライニング位30度から45度、60度と段階的に座位に近づける。リクライニング位は示すとおり角度により長所と短所がある。30度は、頸部が伸展しやすいため頭頚部を軽度前屈させる。食事介助の際はスプーンの抜き方を斜め上方向にする。食事や口腔ケアは、看護チームで同じ援助ができるように手順を決めておく。過度な頸部伸展や姿勢のずれを防ぎ、安楽な姿勢で食事ができるように常に気を配る。

    ●摂食嚥下障害のある人への食事介助方法

    〇食事介助のポイント

     患者の自立度や障害の状況に合わせて、食事介助位置の調節や摂取時の介助を工夫することがポイントとなる。片麻痺がある場合、顔とからだは正面向きとし、介助はスプーンが舌正中に入るように位置を決める(右側介助→右手使用、左側介助→左手使用)。食事介助時は、患者の顔が上向きにならないよう介助者は目の高さに位置し、やや下正面から介助を行う。食事開始時は、水分やゼリーなどで口を潤し食べる準備を整える。基本的な介助時のスプーン操作は、下口唇にスプーンを設置し食物が口に入ることを意識してもらい、口が開いたら舌中央に設置し、上口唇が下がり閉口が見られたらスプーンをやや上向きに抜く。

     開口や閉口が困難な場合は、介助者は力が入りすぎないよう用手的に介助する。
    参考文献

    1)泉キヨ子;看護実践のための根拠がわかる老年看護技術,第3版,メヂカルフレンド社,2016

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