1920年代末から30年代にかけては、第一次大戦の衝動的体験がAmerican Realismに新たな刺激を与え、「失われた世代」を生みだした。戦争に参加した若者たちは、戦争のショックで、人生に幻滅・絶望を感じ、既成の思想も、道徳も、宗教も、信じなくなった。生きる方向を見失った彼らは、中にはパリに滞在して一時虚無的な生活にひたり、その中に文学的な追求を試みる者が出てきた。そのような大きな価値観の異変があり、考え方に変動があった時代に私は興味を持ち、そのLost Generationの作家たちについて研究してみることにした。
Ernest Hemingway(1898-1961)は、The Sun Also Rises(1926)で本格的な活動を始めるが、これはパリとスペインを舞台に“Lost Generation”の姿を描いたものである。パリに国外居住者として滞在していたアメリカの作家Gertrude Steinが、第一次大戦後に同じく国外居住者としてパリにやってきたHemingwayに向かって言った言葉、“You are all a lost generation.”が巻頭に引用されている。彼は、主観的な感情を全く排除して、客観的に外面的な事実と行動のみを正確に簡潔に描写する、いわゆる“hard-boiled”スタイルを創始した。これは、修飾や形容を避け、単なる事件・作中人物の行動や会話などの簡潔で、かたく乾いた表現によって話を進める。情緒に浸ることをせずに、余韻や暗示によって読者に訴え、その推察に任せる技法である。
彼はまた、A Farewell to Arms(1929)で、大戦を背景にしたアメリカの青年と英国の看護婦の厳しい愛を描いた。For Whom the Bell Tolls (1940)は最長編であるが、スペインの内乱を背景に、反ファシストのアメリカ青年とスペインの女性との愛を語り、作者は個人と全体とのつながりに思いをいたすようになった。The Old Man and the Sea(1952)になると、大魚と死闘する老漁夫の姿に真剣な人生の意義を力強く描いている。
Lost Generationの作家たち
1920年代末から30年代にかけては、第一次大戦の衝動的体験がAmerican Realismに新たな刺激を与え、「失われた世代」を生みだした。戦争に参加した若者たちは、戦争のショックで、人生に幻滅・絶望を感じ、既成の思想も、道徳も、宗教も、信じなくなった。生きる方向を見失った彼らは、中にはパリに滞在して一時虚無的な生活にひたり、その中に文学的な追求を試みる者が出てきた。そのような大きな価値観の異変があり、考え方に変動があった時代に私は興味を持ち、そのLost Generationの作家たちについて研究してみることにした。
Ernest Hemingway(1898-1961)は、The Sun Also Rises(1926)で本格的な活動を始めるが、これはパリとスペインを舞台に“Lost Generation”の姿を描いたものである。パリに国外居住者として滞在していたアメリカの作家Gertrude Steinが、第一次大戦後に同じく国外居住者としてパリにやってきたHemingwayに向かって言った言葉、“You are all a lo...