1、はじめに
我が国の現行刑法は、刑罰の種類として、生命刑としての死刑(同法11条)、自由刑としての懲役(同法11条)、禁錮(同法13条)、拘留(同法16条)、財産刑としての罰金(同法15条
)、科料(同法17条)、没収(同法19条)を規定している(同法9条)。
しかし、世界的に見れば、死刑廃止条約(自由権規約第二選択議定書、1989年12月採択
、1991年発効)をはじめとした死刑廃止の動きが世界的な潮流であり、2015年現在、アムネスティ・インターナショナルによると、140か国が法律上または事実上死刑を廃止し、日本をはじめ58か国が死刑制度を残しているという状況にある。このような国際的な動きを踏まえて、我が国も死刑制度を廃止すべきか否かについての是非を意味する、いわゆる、死刑存廃論の争いがあり、死刑制度を残すべきという立場の存置論と廃止すべきであるという立場の廃止論の間で激しい議論が今なお展開されている。
以下、本レポートにおいては死刑存廃論について、幾つかの論点に焦点を絞り、それぞれ存置派と廃止派の主張を検討し、最後に私見を述べていくことにする。
2、我が国における...